ネットで叩かれた時は自分を見直す時

岩上 喜実

学生の頃は陰口、悪口などという言葉でしたが今はそういった事柄は『叩かれる』に代わってしまったのかもしれません。悪口などは目に見える人物が言っていたり、噂していたりという行為なのである意味現実味があるのですが、『叩かれる』のはほとんどネット上のことなのでどういった人達が悪く言っているのか現実味が無く、それはまるでピンポンダッシュのようなもので、本当に後ろから『叩かれた』という印象になります。そして、私もよく叩かれるのです。

地元でイラストレーターをしている…これはあまり叩かれませんでした。始めた時はまだSNSがそこまで広がってはいませんでしたし、むしろ少し珍しがられて興味や好奇が多く、その裏側には「どうせすぐダメになる」という言葉が隠されていたのも知っていたので、自分と近しい人物だけに本音を言って過ごしていました。

 

現役書店員として働く中、本を出版する…これで自分の名前を検索すると項目が沢山出てくるようになり、会ったことがない人の意見が見られるようになってきました。ですがまだ駆け出しのイラストレーターには皆さん優しく、本のレビューにも厳しくも嬉しい言葉ばかりで、頑張っていれば応援してくれる人がどんどん増えていくものなんだ!と今までに無い気持ちの良さがありました。

 

海外出版物が増え、取材など受けるようになる…この頃から働いている書店に「絵を見て下さい」「本を出したいので編集者を紹介して下さい」などという方が多く来られるようになり、やんわりとお断りし続けていたら「調子にのっている」「不細工のくせに」「たまたま運が良かっただけのくせに」とネットの掲示板で『叩かれる』ようになりました。

書店を辞め、カフェをオープンする…やはり飲食店をすると情報番組や情報雑誌に出て良くも悪くも目立ってしまうのか『叩き』がかなり加速していました。

会ったことの無い人たちに憶測の悪口や笑い話のネタにされ、わざわざそれを伝えてくる人もいました。さすがに最初の頃は会う人会う人が怖くて仕事をすればするほど何か言われるのではと思いストレスで12キロ痩せ、人と話さなくなった頃に家族や夫、かなり近い友人が私の事を見守ってくれていました。

この近い人達に何か言われたら悲しいけれど、知らない人や関係の薄い人にネタにされる位だったらその上をいく仕事をすればいいと思い、とにかく3年〜5年は必ずお店を続けてやると決心しました。そしてその中でイラストの本もしっかり出し、自分の納得いく仕事さえすれば叩かれることは怖くないと。

『叩かれる』のが怖いのは、自分に何かばれたくない落ち度があり、それを見つけられたくないからだと私は思っています。そりゃあ、適当な仕事をして叩かれるのは当たり前ですから。

叩かれることは自分への後押しだと思って、これからも間違った方向に進まないようにしなければと思っています。

…最近は全く叩かれなくなりましたが、新たな敵の為に力を蓄えておこうと思います。


その蓄え方ですが、飲食店、イラストレーターとして常に気にしていることがあります。

それはまた、次回に。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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