足を運んでもらいたい、そこから始まるお店づくり。

岩上 喜実

書店員をしていた頃に、沢山の出版社さんの営業の方を見てきました。面白い方や一つ一つを丁寧に説明される方、とても個性があり本の中身の良さもありますが「この人が勧めてくれるなら」とつい発注を多めにするなんてこともありました。
営業力とはすごいものだなと、この時に感じていたのですが私自身が営業に向いているとは思えずカフェをオープンし、オープン景気が終わりを告げどんどん売上げが下がっていく中でも営業をしようとは思えなかったのです。


それは単純に「恥ずかしかった」からです。
それまで営業される側だったのもあり、人に勧める事が上手く出来ず「いつかきっと来てくれる」と謎の祈りを捧げどんどん落ちていく売上げの数字が呪いにも思えたのです。

もう本当に危ないかもしれない、という時にその時始めていたfacebookにちらりとカフェのご飯を載せてみたのです。名称も値段も記入せず、ただの写真として。すると沢山の方が興味を持って下さり、文字を考え写真を撮るのは好きだからここから始めてみようと思いお店のページを作りました。
押しつけがましくなく、季節に寄り添った言葉を選び、どうぞ、良かったら来て下さい。という微かな本音も入れ日記のように載せていきました。
ちょこちょことコメントが入るようになり、その日の日替わりをランチ前に載せてみたり、この時期のおすすめスイーツを入れ、こんなお店ですよ、と地味に続けていくと少しづつお客様が増えてきました。そうやって来て下さった方がSNSで広めて下さり繋がっていくように増えてきました。


投稿の際に気を付けていたのはただひとつ、内輪だけで盛り上がらず、全く知らない人が見ても嫌な想いをしない投稿をしよう、ということです。

内輪で盛り上がるというのは私にとって、とてもとても苦手なもので文化祭のように‪一時‬盛り上がって終わるお店にはしたくないのです。そして内輪で盛り上がるお店ほど他のお客様が入りづらくなるのが私自身の体験から感じており、避けたかった事なのです。馴染みの店があったり、友達のように行けるお店があるのはとても良いことなのですが、お客様とは一定の距離を保ち長い付き合いになりたい、と考えているからです。

そして地味な作業だと思われるかもしれませんが、営業の日というのを決めてフロアスタッフに担当地図とチラシを持たせ不特定多数目当ての「お店に置いて下さい」では無く、病院、医院、薬局、学校、公民館、ヘアサロンなどに出向き「良かったら見て下さい」と1部だけお渡しする営業です。其処のスタッフの方が休憩室で見てもらえたら何かに繋がるのではと始めてみたのですが、それをきっかけによくご予約を頂いたり来店して下さるのでとても嬉しいのです。

お店の前の道路はどう繋がっていて、どの方面の方が使いやすいのか、その職種は何曜日がご都合がよいのかなど考えれば考えるほど次にしてみたい営業が増えていきます。
SNSというデジタルで便利なツールと、手から手へ顔を見て伝えるアナログさで、自分のお店らしくを頭に入れ出来る範囲一杯に頑張っていこうと思っています。

そうやって営業をして、足を運んで下さって始めてスタートです。そこからはお客様に「ここに来てよかった」と少しでも感じて頂かなければなりません。その為にしている私なりの接客があります。
書店員、デパートの受付、ヘアサロンのレセプションなど今まで働いてきた職業はほぼ全て接客業だった私がしているほんの少しのルールがあります。

それはまた、次回に。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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