オンナである自分が出来る事

岩上 喜実

飲食店のオーナーになるということ、それは人生の中でもかなり重い決断のひとつでした。今でも絶賛奮闘中なのでその決断が正解だったのか不正解だったのかは分かりませんが、こうして皆さんに『何か』を伝えようと心が動いたのは、もしかしたら正解の道の方を歩いているのかもしれません。 

規模の大小関係なく、オーナーとは喜びがかなり少ない職業です。収益も皆さんが思っているほど多くないですし、問題はいつも山積みでひとつずつ解決しながら這いつくばって道を進んでいく職業です。しかしそんな姿を他の方に見せるなんてことは出来ず、関西弁でいう「ぼちぼちでんなぁ」という雰囲気で常にいなければならないのです。

しかしその姿がオープン当初は気に障る方が多く、男性は人生をかけて仕事をしているんだ、あいつはオンナだからってヘラヘラして飲食店をなめている、と特に同業者の飲食店の男性オーナーからの批判が多かったのを覚えています。では「大変だぁ大変だぁ」という顔をしていればいいのでしょうか?そんな貧乏神みたいなことはしたくありませんでしたし、必ず続けるという意思があったので恥じる行いは極力したくなかったのです。

そして私は男性オーナーが人生をかけているのなら、女性オーナーとして人生をかけていました。オープンする32歳は女性として色々な判断を迫られる歳でもありますし自分自身でも決断するのに時間がかかりました。オープンするならどうしても10年は続けたい、だけどその間の女性としての暮らしは捨てなければいけない、という事です。

世間にはお店も家庭も自身の美貌も輝くような両立をしている方もおられます。ですが私は元から美貌はありませんでしたし、しっかり仕事をやるなら日々の暮らしは後回しにしてまでも恥じない仕事をしたかったのです。

女性の身体はどんどん衰え、出産も難しくなってきます。デリケートな問題ですが、私はオーナーになるのなら出産は捨てようと思いその覚悟でお店を始めたのです。当初は籍を入れていなかったので結婚も出産も、もしかしたら私には一生出来ないかもしれないけれど決めたことはやり通したかったのです。そのオンナとして道を外れたかもしれない決意を出さず、この記事を書くまで誰にも話さずにきたのは女性だろうが男性だろうがオーナーになる道を選んだ人間として認められたかったのかもしれません。

その姿が滑稽うつる時もあったようで、前にいた女性スタッフに陰で「あんな人生可哀想、女なのに子どもを産まないなんて」と言われていたのも知っています。滑稽でも可哀想でもいい、わたしは、わたしで生きると決めたのです。自分の人生が好きなら、これから何があっても立ち向かえると思っています。

 

まだまだこれからですが、女性オーナーになる方なりたい方はどこまで自分の人生の排除すべきものと残すものが分別できているか、一度重い決断をしてみると気持ちが楽になるかもしれません。

いくら頑張っていても「オンナだから」というのは一昔ではなくこの時代にも付いてきます。「オンナだから」出来る事、その中で「オンナである自分」が出来る事を見極められた時、きっと何を言われても立ち向かえる「オンナだからこその強さ」が持てると思います。

どこかで「子どもを産む」女性に憧れています。そして同じように「お店を守り仕事を貫く」女性にも誇りを持っているのも事実です。どちらの道を選んでも正解だったかもしれない、とも思っています。

ですが今の道を選んだ私はお客様の喜ぶ顔を見て、スタッフが育ち、何より仕事が楽しいと言える今の自分が好きです。

 

その決意をしたお店の中には女性オーナーだからこその視点がいくつかちりばめられています。その視点とは、また次回に。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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