皆さんは今の仕事を決める時のキッカケは何だったのか、覚えていますか？

そしてそれを続けようと思った出来事は、覚えていますか？
私はイラストレーターを仕事にしようと思ったのは、アニメ「魔女の宅急便」の中で絵と真剣に向き合っている女の子を観て「生涯で1枚でも納得するイラストが描くことができたら、幸せだろうな」と思ったからです。

そしていざイラストレーターになり、何度も、何度も直しがある時や悪口をネットに書かれた時は本当に続けていいのか、同じ職業の友人がいなかったので相談する事も出来ず自信もなく、モヤモヤとしていました。その原因の一つは、丁度世間がデジタルイラスト（ペンタブレットなどで描いたイラスト）全盛期になり、手書きの上、修正が難しい着色の仕方をしていたので時間もかかり需要も少なくなって、「やっぱりデジタルイラストに移行しようかな」と思っていた頃、イラストエッセイストの『杉浦さやか』さんの本に助けられたのです。

杉浦さやかさんといえば、沢山の雑誌などにイラストを描かれているので目にしたことがある方は多いと思います。鉛筆やボールペンで描き、コピックの色ペン、色鉛筆、貼り絵などで着色、丁度良い文章が添えてあり、エッセイも読みやすく読者に全く負担をかけない絶妙な長さなのです。

2002年に発行された「マーマリング・トーク」（二見書房）では著者が1994年からつぶやく様に自身で発行してこられたB4サイズのフリーペーパーをまとめたもので、好きな物の魅力を知って貰いたいという気持ちがどんどん伝わってきます。これを読み、私の今のイラストレーターエッセイストとしての基盤と自信が付いた様な気がします。この道は、間違っていないというワクワクした思いを、未だに杉浦さやかさんを読んでいると思い出します。

まだ読んだことがないという方におすすめしたいのは「おしゃべり12ヶ月」（大和書房）です。タイトルの通り12ヶ月分のお楽しみが沢山ちりばめられ、杉浦さん自身のイラストの変化もあり充実した内容の1冊になっています。ＳＮＳの投稿でよく見るお洒落なカフェでランチ、話題のスポットに行ってきました〜という派手さは全くありませんが、ちょっとした散歩や朝の過ごし方、夜の楽しみ方など身近にある小さなワクワクが詰まっていると感じさせてくれます。

イラストエッセイとは？という方にも充分楽しんで頂けると自信を持っておすすめできる本です。

美術館が好きな方には「おさんぽ美術館」（白泉社）も是非手に取ってみて下さい。実際に行ったことのある美術館もありますが、こんなに細かく楽しめてなかった…と少し悔しい気持ちになります。この本を持って、再度訪れたい美術館が沢山あります。そしてその周りを色々な目線で楽しみたいと思います。杉浦さんは目線がとにかく「可愛いモノレーダー」が働いているように色々なモノを察知する能力に長け、それをイラストとエッセイにするのがとても上手な方なんだと思います。人生で、お会いしてお話ししたい一人なのもそれが理由です。

雑貨が大好きな私にとって、「おきにいりと暮らすABC」(白泉社)もおすすめから外せません。杉浦さん自身が旅や散歩で見つけたお気に入りを紹介する1冊なのですが、雑貨だけでなくその周りのおしゃれさんも細かくイラストにしているので、まるでそこに自分も行っているかのような気分になるイラストエッセイです。写真だけでなく、小説だけでなく、イラストとエッセイで小旅行に連れて行ってくれ、家での生活も楽しませてくれる作家さんです。

何故か杉浦さんの本を読む時は普段あまり飲まないチャイを飲みたくなります。あとは外国製のバター風味のクッキーをお供に。是非お試し下さいね。

「マーマリング・トーク」二見書房 9784576011448

「おしゃべり12ヶ月」大和書房 9784479670551

「おさんぽ美術館」白泉社 9784592732754

「おきにいりと暮らすABC」白泉社 9784592732808