自分だけの永遠に愛せる雑貨①壁掛け時計

岩上 喜実

何の用事がない時でも足を運びたくなるのは書店だけではなく、雑貨屋さんも学生の頃から大好きです。お友達の誕生日プレゼントを買いに、自分の物を探しに、例え何かを買いに行こうという目的がなくてもつい足が向いてしまう、不思議な魅力があるのが雑貨屋さんだと思います。そんな女子あこがれの雑貨屋さんで働くことになったのは、20代後半長年勤めていた書店の新しい店舗の中に入る雑貨ブースの立ち上げメンバーに入った所から始まりました。それまでは書店の事しか勉強をしてこなかったので仕入れ方法や陳列術、取引の交渉など一から勉強し店舗のイメージに合う仕入れ先を選んだり、大きな展示会に行ったりと手探りながらその時の上司と魅力的な雑貨を探していました。


当時発刊されていた「雑貨カタログ」を読みながらメモを取り、メーカー名を覚えロングセラーの仕組みなどを知るのがとても楽しかったのです。そして担当する雑貨のコンセプトは「流行に流されすぎない丁寧な暮らし」。

無事にオープンし、当時足を運んで下さったお客様の「これ、10年後もずっと愛し続ける自信がある位好きなの。」と同性の私でも照れてしまう位可愛らしい笑顔での一言がずっと心に残り、その時にふと可愛い物は世の中に沢山溢れる程あるけれど、本当に長く使える良い物ってなんだろう?と考えるようになりました。

 

自分だけの永遠に愛せる雑貨とは、なんだろう。今から10年使ってみて、その感想を何かにまとめようと思ったのを、その時が来たので今回の連載にしようと思いました。実際に10年使って良かった12種類の物達、何かの参考になればとても嬉しいです。

 

1回目は『RIKIの壁掛け時計』。

渡辺力さんというプロダクトデザイナーさんの有名な時計で、雑誌で初めて見たときから心を奪われてしまいました。木製フレームの曲線は穏やかで温かいのに美しすぎて冷酷に見えてしまう時もあり、文字盤のフォントも古い味わいがあるのに新しい爽やかさもあり、とても絶妙なバランスで、必ず私の部屋に掛けて毎日眺めようと決めていました。今はリビングに大きめをひとつ、寝室に小さめをひとつ置いているので毎日眺めるという夢が叶いました。

まずチクタクという音が控えめなのも、電池が切れ入れ替えたらスルスルと自動で時間が合うところも、とても賢くノンストレスです。シンプルなインテリアのお部屋にも、本が沢山積んである本棚にも、無骨な男性のお部屋にも、甘い女性のお部屋にも合う器の大きいところも惚れ惚れしてしまいます。そしてこの時計の魅力が分かる男性と暮らしたいと思っていました。

 

雑貨屋さんでお店番をしていると色々なお客様が足を運んで下さり、様々な趣味の方がいるものなんだなと発見の毎日でした。特に男性のお客様はこだわりを強く持っている方と、全く何もない方とで真っ二つに分かれているのがとても興味深かったです。そしてこの掛け時計をじっと眺めて「買おうかな、どうしようかな」と悩んでいる男性を見ると、「こんな風に時計で悩んでくれる人っていいな」と秘かに思っていました。一度購入したら中々買い換える事が少ない品物だからこそ、本当に好きな時計と時間を重ねていきたいものですよね。10年経っても毎日恋している壁掛け時計、是非心に留めておいて頂けたらと思います。


そして壁掛け時計以外ですと、キッチン用に小さな黒い時計を置いています。

BRAUN(ブラウン)というドイツの器具メーカーのアラームクロックで、コンパクトでシンプルな男性的な印象の置き時計です。この端正な顔立ちが飽きることなく使える理由の一つでもあり、購入しやすい価格なので手軽に扱えるのが大ざっぱな私にもピッタリで、キッチン用にしているのは油がはねても拭けば跡にならず、少々手荒に扱っても問題ないのです。男性への気軽なプチプレゼントとしても最適だと思います。

 

そしてもうひとつ、トイレ用には無印良品の小さな木製の置き時計を置いています。

夜中に寝ぼけながらトイレに行ったときの時間確認として置いているのですが、無印良品らしさに溢れていて嫌みなところが一つもないのです。無の気持ちになれる時計なので、存在感はあまりないのですが無くなったら困る時計なのです。

 

自分にとって時計とは、時間を見るだけの物ではなく一緒に年月を紡ぎ見守ってくれる存在です。私はきっと50代、60代になってもずっとこの時計を見て暮らしているのだろうなと思っています。


ではまた、日曜日に。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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