健全な人間に健全な人間関係が宿る事が望ましい

岩上 喜実

睡眠時間を削ってまで仕事をこなすことを格好良いと思ってはいませんか?

それこそまだ20代の頃は睡眠時間を削って仕事に没頭することをどこか格好いいように思えその頃の本業(書店員)が終わった後、徹夜で副業(イラストレーター)をしているのを自分の中で良い事だとし本当に情けないのですが、自分では全く悪いということに気付かずむしろ今無理しなくちゃいけないと張り切って連日徹夜をしていました。

そのおかげでその時期沢山のイベントも出来たし、何冊か書籍も出せましたがその時の仕事以外の記憶があまりないということに気がついたのです。遊びの連絡をくれていた友人のお誘いもすぐに断ったり、恋人と遊ぶ時間より仮眠をとったり、家族との会話をするのなら栄養のある物をすばやく食べてさっさと仕事をひとつでも終わらせたい、と考えていたからです。

それは仕事への意欲の上がっていく感じと、出来る事が一気に増えオファーがどんどん舞い込む不思議な時期だったので「今無理しなくちゃいつ無理するの」と考えていました。ですが無理をするのには考え方も身体への配慮も足りず、全てが落ち着いた瞬間に一気に疲労とガタが来るようになっていたのです。

それを若い頃は1日ぐっすり寝たり、精力のつくものを食べたりして無理矢理直してきたのですが、それを続けた結果10年後の今大病を侵してしまったと思っています。

あの当時のストレスや疲労の完全ではなかった回復方法のツケが今来ているのだと思い、改めて人間関係を健やかにしたいのならば、まずは自分の身体に向き合い健やかに過ごすべきだと感じたのです。

よく10代や20代のうちにいっぱい日焼けをした女性は30代からシミやシワが増えるといいますが、健康もそれと同じようなもので日々の良いことも悪いことも蓄積されての今だと思っています。今までの行いは全て今の自分の身体を作っているのだと思えば、無理な徹夜や栄養を考えない食事は避けるようになっていました。

故事のことわざで有名な「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉がありますが、これはローマ詩人ユウェナリスの原文を見ると「健全な精神は健全な肉体に宿ることが望ましい」となっています。完璧な健康体であっても健全な精神宿るとは限りませんし、かといって不健康な身体の方は不健全な精神であるということでもなく、体も心も自分の無理のない程度の健康な状態でいるのが一番望ましいのだとも思います。

お酒やお菓子が好きな方が、それを悪と言われて口にすることが出来なくなってしまった時、確かに身体にはいいかもしれませんが大切な心の喜びという感情がなくなってしまいイライラしてしまうのなら、何事もほどほどに意識をして健康を保っていくのが一番精神が安定する気がします。

そして不健全極まっていた私自身の生活は、約一年前に大病が分かり意識を変えることになるキッカケになりました。ずっとずっと仕事のことを考え、予定といえばまずは仕事の予定を組んでから空いた日に他の予定を入れ、休日も急ぎの仕事があれば休み関係なく仕事し、いかに周りの人が仕事をしやすく出来るかを考えてばかりいました。

それでも良かったのですが、今は予定を詰め込みすぎず自分以外のスタッフに任せられることは信頼して任せ、休日は家族の時間や友人とゆっくりご飯やお茶を楽しみ、夜をゆっくり過ごすという当たり前の健全な生活をしています。

朝起きて体温を計り、白湯を飲んで腸をゆっくり起こしてから朝のスープを出来るだけ飲んでいます。そして仕事に行く前は軽く台所周りの掃除とリビングとベッドルームを片付け、帰ってから見ても気持ちの良い状態にしてから軽くストレッチをして深い深呼吸をしたら仕事に出かけます。なぜか深い深い深呼吸で胸も開き、脳が最初から良く動いてくれるような気がします。そして仕事を終え帰宅すると、季節関係なく鼻からぬるま湯を入れ口から出す鼻うがいをし、鼻を洗浄します。そのついでに手洗いをし、夕ご飯の支度に取りかかります。その後はお風呂にゆっくり浸かったり、夜の白湯を飲み身体を温めてお布団に入って眠りにつきます。なんのへんてつもない日常ですが、それさえも以前の私は出来ていなかったのです。

そしてこの何てこと無い日常のルーティンこそが、私の中にある健全な精神が出てきて、この人間関係で溢れている社会で出来るだけ平静を保てるように補ってくれているのだとも思います。良い人間関係を作りたければ、まず自分が他人に対して良い人間であることが大切なのだと気付くことができました。

まずは、日常生活のルーティンから何かを排除し、足りない所は何かを補ってみるところから始めるといいのかもしれません。

そして私は人間関係において、様々な贈り物を贈るのが重要なキーワードだと思っています。それはまた、次回に。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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