魔法使いが奏でるBGM

岩上 喜実

カフェのBGMには極力日本語が流れないような曲をセレクトするように気をつけている理由は、会話の邪魔にならないようにとか考え事の遮断になってしまう事のないように、と色々ありますがまず一番の理由は日本語のメッセージは直接的すぎてアーティストの声質によっては聴く分にはBGMに向かないアーティストもいます。

ですがこのアーティストは頭に残るのに全く邪魔な雰囲気はなくむしろその場の雰囲気を心地よく底上げしてくれるようなメロディと魅力的な声色で、新曲が出る度気になって手に入れ店内で流してしまいます。

大橋トリオ(おおはしトリオ)

まずは名前が気になって聴き始めたありがちなパターンですが、トリオと付いていますがソロユニットで活動され2009年にメジャーデビューをしています。ピアノやギター、ベース、ドラムなどアコースティックをベースにあらゆる楽器をこなせるマルチプレイヤーでありながら作曲や編曲などもほぼ全ての演奏も自身が行っています。

https://youtu.be/7IPU8UFQCm4

風貌もイマドキ感が有りながらナチュラルなテイストもあり、それも魅力の一つだと思いますがジャズをベースにダンスやロックなど色味や毛色の違う音楽も取り入れ、長年のファンも飽きさせず、新しいファンもまるごと取り込む目に見えない強さを感じています。もしかしたらあのユルい声量と優しいメロディに騙されそうになりますが、毎回自分ですごくハードルを上げてチャレンジを繰り返しているのではないかと思っています。それほど、全ての曲の作りが確固たるもののように思えてしまうのです。

まず聴いてほしいアルバムは「THIS IS MUSIC」(2008)というメジャーデビュー前に出しているアルバムですが、1曲目からまだ眠い目をこすりながらカーテンを開けると、とてつもなく爽やかな朝がやってきたという何とも静かな衝撃が走った1枚です。「NEWOLD」(2010)も1枚目よりは少し落ち着きを感じますが、これも夕日が沈むのを濃いエスプレッソを飲みながら眺めている情景が目に浮かぶほどストーリー性を感じる魔法使いが作ったようなアルバムです。

https://youtu.be/9E8pcmWavdQ

そしてもう一つの魅力は、大橋トリオは日本のアーティストのカヴァーアルバムも出されているのですが、どの曲も原曲を知っているのにもかかわらずまるで新曲を聴いているような新しい発見の連続なのも驚きなんです。

「COVERBEST」(2014)というアルバムでは小沢健二さんの「ラブリー」や宇多田ヒカルさんの「treaveling」、海援隊の「贈る言葉」など聴き慣れすぎた曲も全て大橋トリオカラーに染まっていて、カヴァーにありがちなアーティストがカラオケをしているようなアルバムには仕上がっておらず、全く新しい魅力を引き出し過ぎているずっと聴いていられるカヴァーアルバムです。

https://youtu.be/ulEyLuBDvRE

今は色んなメディアで聴くことが多くなった大橋トリオですが、カフェがオープンしたての頃は流していると「この曲は誰の曲ですか?」と聞かれることも1回や2回では無く男性女性好きなジャンル問わず耳に残り、頭に優しくインプットされてしまう本当に魔法使いのようなアーティストです。

魔法にかかりたい方は是非聴いてみて下さいね。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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