⑤身体のメンテナンスをする

岩上 喜実

仕事を自分の思うように進めるのも、友人達や家族や大切な人と一緒に笑い合って日常を過ごしたり旅をしたり出来るのも、楽しい事も大変な事も思う存分出来るのは全て身体があってこそのものだと思っています。以前の私なら、そこに〝健康な身体あってのこそのもの〟と付け加えていましたが、二年前病気をし、手術をし、治療中の身にとってはそこに〝健康な〟と付け加えることができず、そして不健康な今だからこそ分かる資本の身体作りの大切さを感じ、そこでこの数年で加わった私の気持ちの切り替えスイッチは『身体のメンテナンスをすること』です。

 

社会人に成り立ての頃から十数年、無理して仕事を頑張らなければ何かに追いつかれたり、そして置いて行かれたりの恐怖と戦ってきました。それは今となってはその敵は自分であったことや、何にも追いつかれたり置いてかれはしないという事が分かるのですが、何者にもなれていない若き私はそのことが怖く、何も残せない人間になるのが悲しかったのです。

そのため眠らなければならない時間に仕事をして睡眠時間を削ったり、食事の内容に偏りがあったり、運動をせず同じ体制で何時間も仕事をしたりと健康な生活をないがしろにしてきた結果が病気に繋がってしまったのだと考えたら、少しでも自分に甘くすることは出来なかったのかと後悔することもあります。

ですが、その頑張ってきたおかげで歳を重ねて病気をしても治療に専念できる蓄えや状況が持てたのだとも思い、頑張ってきた私に感謝する事も多いのです。あのとき考え続けてきた何者になれたかは分かりませんが、私は誰かの大切な人であり、そのためには健康でい続けたいと願うようになっていたのです。

 

そのためにはきちんと異常を感じたら自分やネットの判断に頼りすぎず、安心して任せることのできる病院や医師や薬剤師ときちんと話しながら診てもらい、今後の過ごし方について指南を受ける事も大切な事なのだと思ったのです。

歯が痛くなったら歯科に行く、肌が荒れたら皮膚科に行く、眠れないなら睡眠外来に行く、頭痛や肩こりがあったら脳外科や頭痛外来に行く、膝や腰の痛みがあったら整骨に行く、婦人科系の悩みがあったら婦人科に行く、など自分の身体の悩みに合ったその専門のかかりつけを作りドラッグストアでの市販薬に頼りすぎず専門医に診て貰い自分の判断だけに偏らないということが新しい気持ちの切り替えの一つになっていった事に気がついたのです。

その診て貰った内容に疑問を感じたらまた別の病院で診て貰うこともできますし、何より自分の不調の原因がちゃんとした名前で存在し、対処することができればその事で悩んでいる時間さえもなくなる事を考えたら、病院に行く時間がもったいない、という考えがなくなるのだと思います。きっと自分の為に使う時間があるなら、次に繋がる仕事の時間に回したいと考えていましたが、不調が続くと良い考えも思いつかなくなり、要領も悪くなり結果的に効率がとても悪くなるものなので、仕事のためにもそして大切な日々の生活の為にも自分の身体の不調に耳を傾け、見て見ぬふりをせず診て貰い対策を立てるのが気持ちが切り替わる大切な行為だと思うのです。

 

身体を壊して喜ぶ人などいませんし、自分の身体を守れるのは自分だと思って大切に身体と心を慈しんで欲しいと願うのです。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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