カフェを「つくる」

岩上 喜実

何をしている時、一番充実感があるのかと考えたとき何かを「つくる」という行為がとても好きで出来上がりや完成が近づくと心が弾み、とても幸福な満足感を得ることに気が付いたのです。

そのつくる行為は、目に見えない人間関係かもしれないし目に見えやすい物体かもしれません。ですが今回の「つくる」は今経営しているカフェ自体であったり、そのメニューであったり、もう一つの仕事のイラストであったり、趣味の料理だったり、分かりやすい「つくる」を12回に分けて伝えたいと思っています。

今回は「カフェ」を「つくる」ことに焦点を当ててみました。

 

まずカフェをつくる時に始めたことはどんな人に足を運んで欲しいのか、そしてどういった用途で使って欲しいのかというイメージを膨らましていくことでした。

コンセプトを作りイメージを形にしていくというお店作りで一番の楽しみで醍醐味を進めていくと、頭が痛くなる資金の調整、希望はあるけれど中々思い通りにはいかない店内の内装、そして人材の確保に研修、メニュー作成に原価計算、沢山の書類に沢山の申請書…と楽しくないけれどやらなければならないものばかり続いていくのです。

しかも勿論オープンしている訳ではないので収入がないまま色んな事を進めていかなければならないので、どんどんすり減る貯金にどんどん気持ちもすり減っていき、どんどん今まで味わったことの無いような不安感や気疲れ、そして後ろ向きになっていく気持ちを持ちました。

それでも何とかオープンまでにこぎつけ、試行錯誤しながら準備期間を入れたら8年になりましたが…あの準備期間は私の「カフェをする」という気持ちの再確認になっていたのでは、と思っています。なにかを作るのは意外となんでも簡単ですが、それをいかに自分らしく長く続けていくことの厳しさを準備期間が容易ければ容易いほどダメージが強く押しつぶされていたのだと思います。

カフェをしたい、と思っている人はとても多いと思いますし、実際夢を叶えている方やこれから準備を始めている方も多いと思います。ですがどんな仕事でも当たり前の事なのですがお店という建物や、人材、メニュー、全てがオープンしてからが本当の「カフェをつくる」というスタートなんですよね。そしてそれを数ヶ月、数年とずっとモチベーションを継続していくことが何よりも大切で大変な事だという事に私自身オープンしてから気付いたのです。何て浅はかで、脳天気で、計画性がないのだろうととても深く反省しています。その当時はオープンしただけでカフェを作ったと勘違いしていましたが、8年前の今頃から今現在まで満足したことは一度も無く、まだまだ作り続けていかなくてはと静かに、そして楽しく闘志を燃やしているのです。

周りの協力や励ましや主人の支えでこれまで続けてきましたが、ふと私自身は「カフェをつくる」ことで何が得られ人生の何に活かされているのだと思ったのです。

カフェを始めてスタッフやお客様、業者の方など本当に沢山の方に出会うことも出来ましたし、ノロノロの成長ですがようやく色んな視点で物事が考えることが出来るようになってきました。ですが、それは何に活かされているのでしょう。分かるのはきっと閉店したときか、誰かに引き継ぎをして自分が去る時なんだと思います。

自分で作ったカフェにまだ自分を必要としてくれる場所があれば、精一杯悩んで行動するのがとても楽しいのです。

「カフェをつくる」という事、それは自分の成長と同じように「つくり続ける事をつくる」という事なんだと思っています。

次回はそのカフェのメニューを「つくる」です。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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