メニューを「つくる」

岩上 喜実

前回の「つくる」はカフェでしたが、そのカフェに必要不可欠なものといえば店内のインテリアやテーブルの配置だったり、スタッフの接客や料理の仕上がりや味、そしてオペレーションだったり、雰囲気を作るBGMだったり、様々な項目があります。

そのなかでも大切なのは飲食店では要になる「メニュー」を「つくる」という事。今回はこちらに焦点を当ててみました。

 

お店のコンセプトが固まってくると、大体の要となるメニューが決まってきているはずです。その頭の中にあるメニューを形にしていく作業の中で、どれだけ来て下さるお客様のイメージができているかが私の中ではポイントになっていました。

扱いたい食材や、使いたい器、そしてどんな盛りつけにし、どのような人が食べてくれるのか…それをいかに細かく想像することができるのか、それが最初はとても難儀で正解が分からず半年以上も「ああでもない、こうでもない」と頭の悪い私にはとても難しい課題の一つでした。

オープンの時は経験の豊かな料理長がいたので、頼りにしていましたがカフェの準備期間を含めた8年間、カフェの経営と共にメニューの開発はずっと頭から離れないままでいるのです。それ位、メニューをつくるというのはカフェの経営の中で半永久的に続く宿題のようなものなんだと痛感しています。

常に新しい食材や流行の盛りつけや組み合わせが世の中に出てきているので、その中で自分のお店に合うものをふるいにかけ、挑戦していくことがお客様や何より働くスタッフの新鮮さや発見に繋がり飽きさせないというのがポイントになってくるのだと思います。それを最初の頃は一人で悩み続けていたのですが、数年も続けているとスタッフがどんどんと新しいメニューや提案をしてきてくれ、私一人では思いつく事ができなかった挑戦ができるようになり何も出来なかった私は、もう一人ではなく考える時間も知識も格段に膨らんでいる事にとても感謝しているのです。

 

実際に、ひとつメニューを作ってみましょう。

私自身はカフェメニューの要のひとつ、パンケーキのメニューの作成を主に担当しています。

モーニングやランチ、そして夜の時間といった時間制限をせずに甘い物を食べたくなったらいつでも食べることが出来るのが特徴で定番商品としてどの時間に食べる事ができるのですがその反面来て下さる方が飽きる事がないように、と定番以外の毎月変わるパンケーキというメニューを作成しています。そのパンケーキは一度焼いてからフレンチトーストで使われるフレンチ液に漬け、またオーブンで焼くと

いう表面がカリッとした生地になるのが特徴です。

その時期のメニューを作る時の最初のポイントは、人を惹きつける旬の食材があるか、を先に考えます。1月はお正月を考え小豆や抹茶、柚子などを用いたり2月や3月は甘くなる苺を使う、というように果物や季節のイメージに合うものをリストアップし、それをどう組み合わせるかを何回も試作し形にしていきます。

洋服のコーディネートで3色以上使用すると見る人に対して圧をかけてしまう、という事と同じでパンケーキもポイントになるものを3つ以上は控えめにすることにしています。先週までしていた2月のパンケーキは、①旬の果物であるいちご②オリジナル配合のショコラクリーム③濃厚ベルギーチョコアイスの3つを主役にしました。この3つを決めたら、それらをサポートする脇役を決めていかなくてはなりません。主役3つとパンケーキを合わせて実際試食をしてみると、頭の中で計算していた味や食感、風味、そして見た目などの中で足りないものが見えてきます。

実際このパンケーキで足りなかったのは、食感がいちごのシャクッとした食感の他には何かインパクトが足りずただ甘い物を口に運んでいるだけのものになってしまいました。

そこでチョコ、というキーワードをこちらも3種類用意してトリプルショコラという名前にしたらチョコが好きな方は気になる商品になるはず、と思い濃厚ベルギーチョコアイスにかけるとパリッとするチョコレートソースをかけ、パリッという食感もプラスすることにしました。ここで、やっとメニュー作成に一歩進みました。

こういった事を何回も試作し、様々な角度からお客様が1ヶ月間楽しんでもらえるよう、そして作るスタッフが飽きないように作っていきます。

 

次回はこのパンケーキの仕上げを「つくる」ことをお伝えします。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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