メニューを「仕上げる」

岩上 喜実

前回の「メニュー」を「つくる」、今回はそのメニューの「仕上げ」を「つくる」事に焦点を当ててみました。カフェの要となるメニューの一つであるパンケーキは、定番メニューとは別に季節を感じさせる月ごとのメニューを作っています。

 

前回の3つの主役が決まり試作が終わった段階で、一度全ての食材の原価を計算します。原価とは商品の売価を決める為に必要な項目でここの割合を高くしすぎてしまうと、もしその商品が有り難い事にとても人気が出て沢山のオーダーがあっても、原価率が高すぎると売れれば売れるほど赤字になってしまい、家賃や人件費を支払ってしまって利益がなくなってしまいます。かといって気にしすぎて安価すぎるものを選んだり目新しいものがないまま、あまり原価率を下げすぎてもお客様から魅力的ではない商品になってしまいオーダーがなく食材の過剰保管になってしまうのです。

その原価の計算式は全ての材料の仕入れ値と使用する分量を割り、それらを全て足した金額が原価となりそれを売価で割り、×100をする事によって原価率が出るのです。

例えば原価が200円で880円の売価なら200÷880×100で22%となります。一般的にはフードで28~32%、ドリンクで10~20%程が目安になっていますのでカフェを始めるときは売価を基準にして原価をするのもいいですし、毎月決まっているメニューの変更なら目安の原価に近づけるように試作をすると思いの外大はずれになってしまってもう一度いちから考えなければ…となる事が少なくなるのだと思います。

最初の頃はこの調整と計り方さえも分からず苦戦してしまいましたが、やはり頭の悪い私でもコツコツと8年近く続けていれば「この材料とこの材料を足したらこの金額だから、まだ○円足せる」という事が分かってきたのでホッとしています。

 

パンケーキの試作をし、大体の原価が出した段階で余裕がある場合は補足をしていきます。このパンケーキの場合、10円ほど余裕があったので見た目に遠近感が出て新しい食感がプラスされるクラッシュアーモンドとチョコチップを足し、チョコレートとは違う甘さのカラメルソースを少量プラス、コントラストとして白い粉糖を全体的にまぶしアクセントとして緑色のセルフィーユを飾り出来上がりです。遠くから見たときにも色のコントラストが分かりやすくすれば、例えば違う席に運ぶ姿を見て「あれが食べたい」と思わせる事ができるのです。そしてこちらをカメラマンに撮影してもらい、広告を作成し、店内でのPOPやSNSでのお知らせといったメニューの仕上がりです。

 

そこで終わりではなく、このメニューをフロアスタッフは理解しお客様にお勧めする事が出来るか、そして実際に作るキッチンはどの手順で行えば皆均等に盛り付けが出来、更にスピードを上げることが出来るのか、というのを伝達していきます。

個人店でしたら全て理解している自分だけが把握していればいいのですが、自分がいなくても当たり前にアピールポイントから味、手順などの段取りを関わるスタッフ全てに伝達をするのも大切な役割になるのです。

ここまできて、やっとお客様にお届けすることができるのですが実際にお客様の反応はどうなのか、食べるスピードや残される具材はないか、そしてどの世代の方が興味を示してくれるのか…など次に活かすための情報も収集しなくてはいけません。次、そして次、と考えるのは初めの頃は辛い特訓の様なものでしたが、調理師でもなく製菓の勉強をした訳でもない自分が出来ることは人より多くアイデアのアンテナを張り、新しい知識を溜め込み、そして自分のお店に合ったメニューを常にイメージしておくことがとても大切なのだと思っています。収集したものを一皿に落とし込むことが出来る、その環境にも面白さを感じています。

 

「メニューをつくる」、そしてそれを「仕上げる」事のバランスがとても大切なのだと感じ「つくる」事を楽しみながら苦悩していきたいと思っています。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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