イメージを「つくる」

岩上 喜実

飲食店だけではありませんが、様々な場所で最初に作っておくとどんな状況になっても軸がずれないので便利な「イメージ」という意識。仕事以外でも自分のイメージを相手や不特定多数の色んな方に伝えやすいイメージ戦略というものは人の前だと緊張してしまいいつも通りに出来ない人ほど積極的に動くと楽なのに…と思う事があります。

精神論や気持ちの持って行き方はいくつもありますが、視覚的にどうしたら具体的にイメージというものがつきやすいのか、「イメージ」を「つくる」という事に今回は焦点を当ててみました。

イメージというものは戦略的な洗脳、という意味が含まれているのではないかと思うくらい最初に受けた印象や衝撃的だった出来事というのは人の頭から払拭されることは難しくなってしまいます。最初は怖い印象だったのに、飼い犬をとても可愛がっていてとてもいい人なんじゃないか!とか、ふんわりした優しい印象だったのに部下にネチネチ厳しいことを言って実はとても怖い人なんじゃないのか…?と世間はそれをギャップというのかもしれませんがそれをうまく仕事に活かすことが出来たらイメージ作りに繋がるのだと思います。

 

飲食店では料理の他にドリンクの仕上げ方や店内の細かなところ、そして接客をするスタッフの動きや表情をとても良く見ておられる方がとても多いのです。働く側からすれば毎日働いているので掃除や動きが流れ作業になってしまうことがありますが、お客様からしたら初めてだったりお久しぶりだったりするので、その時にお客様が思い描いているこのお店のイメージと合わない場合、不協和音が流れだし居心地が一気に悪くなってしまうのです。

接客の基本は顔と声は常に笑顔で、動きはすばやくというスタッフの動きは勿論、視覚的な面で言えば店内で気をつけているのは本棚の雑誌の向きです。書店員時代の癖もありますが、一瞬でお客様が今読みたいものを片手でサッと取ることができるように四段ある上二段はお客様層に合った雑誌を、本の右側の背がそっと浮くようにセットすることです。寒いときは「温かい料理」の見出しの雑誌や、乾燥対策などの情報誌を見やすいところに設置したり一気に温かくなってきたら春服のコーディネートやカメラ雑誌や地域の情報紙などを置くことにしています。そして下二段はお子様が取りやすいように大きめの絵本や読みものを置きます。絵本もおいしそうなものを題材にしているものを選び、お料理が来るまでの間も楽しんで貰えたらと思っています。常に少しずつ様々なお客様が読んでくれそうなイメージを持ちながら書店でセレクトし置くことで「ひとりできてもあそこは雑誌があるからいいや」というイメージがつくのです。そういったようにさりげないのにそのお店のイメージを作ることが出来るのは音楽や観葉植物だけでなく本棚でアピールすることができるのです。

 

そして食器やカトラリー選び、壁のディスプレイの仕方という空間作りだけでなく営業時間をむやみに変更しないこともイメージ作りに大きく影響すると感じています。

例えば自分が友達とご飯を食べに行こう、となった時まず気になるのは定休日や営業時間だと思います。その後にメニューや車の場合は駐車場の有無もプラスされていくのですが、もし予約をせずに行ってしまい臨時休業だったとし、それが数回同じお店で経験した場合、どこかで「予約しないといけないお店」「たまに臨時休業しているお店」というイメージがついてしまい意識的に「気軽に行けないお店」として分類される怖さがあるのです。自分のカフェではオープン当初からモーニングもしたい、と考えていましたがモーニングをするとなるとその時間から動けるシフトを組み極力定休日以外は毎日営業したいので体制が整うまでランチからの営業をしていました。

その数年後、その時間帯で安定ある営業ができるようになる事が確認できてからモーニングを始めましたが、やっとお客様に「モーニングから営業しているお店」として朝も予約が入るようになってきました。

いいイメージも、マイナスになってしまうイメージも、不思議なことにほぼお店側から提供できるものが多いのです。自分をなまけさせない為にも、イメージづくりというのは日々の行いの結果なのだとも思います。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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