色で誘導する手順を「つくる」

岩上 喜実

前回は色をどのような順番で絵にのせていくといいのか、をまとめました。今回はその色の組み合わせ方についてまとめてみます。

色というものには沢山の昔からの言い伝えのようなものや、風水や企業のイメージや施設の壁の色などの〝人にどういった印象を与えるか〟という事が鍵になっているものもあれば、完全に自分の世界を作る一つの手順にしているものもあります。

分かりやすく言えば、100円ショップなどで金額も用途も同じなのについ手に取ってしまうカラーはありませんか?私自身は意図的にホワイトを必ず手に取るのですが、無意識でも手に取るもののカラーはいつもホワイトです。その意味は自分の持ち物や部屋で目に入る物の中に人工的なカラーを入れたくない、というのが理由の一つです。

自分がリラックスする最上級の空間が家だとしたら、その中に100円ショップのものだろうが高い物だろうが苦手な色が視界に入るだけで少しずつストレスが溜まってしまうのです。それに気付いてからは、なるべく買う物はホワイトに近い物を購入するようになり変なストレスはなくなっていったのです。

 

その事があってから、自分の描くイラストに着色をする時は〝どんなイメージをもってもらいたいか〟に重点を置いて色を着けていくようになりました。

このイラストは、クライアントとしてはどの世代、どの客層に見て貰いたいかを知り、ペーパー式なら見開きでどの位置にポイントとなる色を使ったイラストを置いていくかが大切になります。色彩というものはいわゆる言葉のない主張や心理状況を左右するものなので、自分の気に入った色だけをのせたり、その時の気分だけでセレクトするのは大変効果的ではないと思います。私はこの辺りを十分理解し、イラストの仕事で活かすようにしてからは企業さまの仕事依頼、そして息の長い契約を結べることに繋がっているのだと思います。

ものすごく簡単にまとめたら、見ている人の心理をどうさせたいかを誘導する手順と思って貰えたら難しく考えなくてもいいのかもしれません。

 

例えば一人の女の子が着ているワンピースの色をどうしようか、と迷ったら掲載される季節を考え、その上でプラスαのカラーコントロールをしてみましょう。

ブラウンは癒やしや落ち着きをコントロールしてくれるので、病院の会報誌やご高齢さま向きの雑誌のイラストに使用することが多いです。安定した印象や、緊張を緩和したり歴史を感じることもあるカラーです。私も好きなホワイトは始まりや出発を意味し、信頼感や清潔感、そして空間の広さも感じさせることも出来るカラーです。真逆と思われるブラックは強さや権力、権威を感じさせたり自己主張を強くしたり高級感を与えるカラーとなります。ブラックを使用する場合は他の色の格上げになるので、ポイントで使ったり強い意志を感じさせるにはピッタリのカラーなのです。

中途半端なイメージがあるグレーは、実は協調性や柔軟性を表しているので控えめな上品さを表すのにはピッタリのカラーだといえます。見た目通りのイメージと言えばレッド。パワフルでアグレッシブなので活力を感じさせ気持ちを前向きにしたり、時間の経過を早く感じさせるといった刺激的なカラーです。

世界的に見ても好きな人が最も多いブルーは集中力を高めたり興奮や食欲を抑えたり睡眠を促進させる意味もあります。レッドとは逆でブルーは時間の経過を遅く感じさせる、というイメージもあるのです。

グリーンはイメージ通り自然を表し、心や身体の疲れを癒やしたり鎮静作用があるので緊張を緩和するとも言われています。グリーンはイエローとブルーを混ぜた色なので、両方の意味も合わせています。

そしてイエローは光や太陽を表しており、心を弾ませコミュニケーションが円滑になる色とも言われています。こういったカラーは初対面の人が多い会場などにイエローカラーのお花が飾ってあるといい、という事例もあります。集中力が発揮され、判断力が上がり記憶力が高まるカラーです。

イエローに近いオレンジはどうでしょう。レッドとイエローの中間なので両方のポジティブな要素だけ抜き取ったカラーだとも言えます。エネルギーと開放感を与えることができ、整理整頓ができたり陽気な気分になるのです。

そして昨今は男性でもファッションに取り入れることが多くなってきたピンクは幸福感や安らぎを与えたり心も身体も若くなる傾向にありますが愛情を求めるようになり鬱陶しくなる性質も持っています。

 

好きなカラーが自分に合っていると一概には思わず、一緒に暮らしている家族に家ではどんな風に過ごして欲しいのか、そして自分もどんな人間になりたいかなど考えて色んな場面で合ったカラーをセレクトできるともっと楽しいですよね。

 色々なカラーを遊ぶ余裕を作るのが、楽しいのかもしれません!

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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