大切な人を日々大切にしたい
私は、乳がんを発症しました。
申告を受けた時はテレビドラマで観るような、世界が真っ暗になったり涙が止まらなかったり…という事は全く無く、妙に落ち着いていて何故か「あぁ、私で良かった。」と思えたほどでした。世界は真っ暗になんかならなかったし、自分以外の周りの人が発症するくらいなら、私が受け持ちたかったのだと思います。
主人や家族じゃなくて良かった。友人や一緒に働いているスタッフじゃなくて良かった。そう思えた自分にもホッとしたのを覚えています。
今世間では乳がんや他のがんの情報が沢山溢れていますが、いざ自分自身がなってみると分からないことだらけで本を探して読んでみても読めば読むほど不安が募り、家庭のことや自分の身体、大切な仕事や蓄えなどの心配が日に日に膨らんでいました。
私がこの事を記して伝えようと思ったのは、私自身が申告されてから治療中の今現在までの事で、同じ悩みを持って不安の最中に居る人が少しでも楽になればと思い伝えることを決めました。エッセイの仕事をしているので、経験した事を私の言葉で不安な人が一人でも少なくなればと思っていますが、それに対していい顔をしない人や叩く人、悪口を広める人が沢山居ることは知っています。
私も発症する前までは、闘病記などの類いはあまり好きな方では無く、できれば前向きで明るい文章を頭や心に入れておきたいし、こんなに苦しいんです!という情報は当時健やかだった私には遠い存在でした。ですが、それは自分が健康で身体の悩みが無かった側だったことに気付きました。
そういった類いの話をどこか他人事のようにいい顔をせず、叩き、悪口を言う人は少しでも暗い情報を自分に入れたくないし、発信する人は一体何がしたいんだ、と無意識に思っているのだと思います。そして私自身も、どこかで健やかな自分を誇りに思っていたのかもしれません。今ではその健やかな人の視線が怖く、この文章をまとめている今でさえ投稿するのを悩んでしまいますが、私が実際治療を受けているときにこういった説明なら分かりやすいと感じた事、具体的なお金の事、薬の副作用など、怖いと感じている方に伝えたいと思っています。
そして文章にまとめる事を決めたきっかけは、先日亡くなられた小林麻央さんの事でした。テレビに出ている頃からとても笑顔が素敵で、闘病中もニュースで見る笑顔の写真がとても綺麗で治療されている時に頭のどこかで、回復してお子様の成長を一緒に歩んでいけると思っていたのです。そして同じ病気、同じ30代ということも有り、それまで怖くて見ることが出来なかったブログを亡くなられた時にまとめて読み、途端に自分が恥ずかしくなりました。
発覚した時、手術の時、本当に身近な人にしか知らせず治療をしていた私は、病気自体が悔しく、そして恥ずかしく周りから同情されるのが怖かったのです。知らないところで噂をされるのも、薬の副作用で前のように仕事が出来なくなったことも、全て「がんになって、かわいそう」と思われるのが怖くてしょうがなかったのです。
ですがそれを発信することによって病気の本当の中身が伝えられ、そのことが同じ病気で悩んでいる人の希望になるとしたら、恥ずかしい、同情されたくないと思っていた自分を止めようと思えたのです。発信することで叩かれてしまっても、周りの本当に大切な人はちゃんと私を見てくれるし、私自身もその大切な人を大切にしたい、とシンプルに考えることが出来ました。
私はいま、ホルモン療法という治療をしながら過ごしていますがいつ転移するかも分からないし、薬の副作用もあるので怖くて涙が溢れるほど泣くときもありますが、幸い見た目も前と変わらず結構元気に過ごしています。
そして主人という最大の味方と、家族、友人、仕事仲間が私の側に居てくれます。本の中だけでは分からなかった、がんという存在が私を少し成長させてくれたとも思っていますが、それで周りに迷惑をかけたということも、私にとってこれからの気力に繋がっています。
宣告をされてからの不安な日々を、人で癒やされた事を改めて知ることが出来、仕事ばかりだった私に立ち止まって考えさせてくれたきっかけだとも思っています。
どうやって発覚したのか、それはまた次回に記し乳がんかも、と不安になっている方が少しでも楽になりますように。そしてこの世の中から病気で苦しむ人が少しでも減りますように、と思っています。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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