マイフレーズを持つ

岩上 喜実

みなさんはマイフレーズを持っていますか? 

仕事を始めた20代はじめの頃から自分の中で、できれば「言いたくない言葉」と「自分のものにしたい言葉」を分別するようにし、それを意識して今40歳前になって積み重ねた「言葉」を整理するようになりました。

その理由の多くは人間関係をスムーズにしたいという思いがあったのです。人間関係というものは、学生の時は学生の時なりの悩みがあり、そして20代は20代の時なりの悩み、30代以降も続きその上女性ならではの複雑な悩みも加わり、どの世代の女性と話しても人間関係というものは少し厄介で難しいものなんだと思います。

 

まずはできれば「言いたくない」言葉その①は「でも」でした。

言わないように意識をしていくと、会話の内容をそのまま受け止めていくのでは無くその奥の方まで考える癖が付き、それは相手がまず何をして欲しいかを優先して考え、その後に何を自分がしたらより良い解決に繋がるか自分に言い訳せずに物事が進むのが快感になっていました。

「でも」を使っていた学生時代、テストの点数が悪ければ「でも○○ちゃんも悪かった」と安心し、上手く絵が描けなくても「でもやれることはやった」と自らを励ます人間でした。それでは言い訳ばかりが蓄積し、成功しなかったときの保険に過ぎないと20歳の頃急に恥ずかしくなり、それから「でも」を使うのを一切止めることにしました。今は仕事で指導する立場にいますが、「でも」を使う人は一向に成長が進まず、出来ない理由ばかりが積み重なって自らで壁を作っているように見えます。

 

そして「言いたくない」言葉その②は「かわいい」です。

何が悪いわけでは無い言葉なのですが、専門学生時代に沢山の絵やデザインを見ているときに「かわいい」と多用する同級生と一緒に遊んでいました。黒く悲しそうな絵を見ても「かわいい」、美味しそうなドーナツを見ても「かわいい」、そして本当に可愛い人を見ても「かわいい」とその子と一緒に表現していたのが何だかとてももったいない事に気付いたのです。「かわいい」という言葉は何も悪くないのですが、黒く悲しい絵を見たら何が悲しいのかきちんと感想を言える人になりたい、美味しそうなドーナツを見たらどう美味しそうなのか言える人になりたいと思い「かわいい」とい言葉を封印したのです。

 

自分に言い訳しないように「でも」を言わず、自分の表現力を上げるために「かわいい」を使わない。ですがNGだけ作るのも寂しかったのでその逆で自分だけのOKフレーズを作ろうと考えたのです。

何故か分からないけどいいようのない不安が襲ってきた時や、焦ってイライラしそうになった時、私は自分にも周りにも「大丈夫、何も失敗してないよ」と言うようにしています。失敗をするんじゃないかとか、嫌われているんじゃないかというのは大体自分の妄想で悪いタイミングが重なるとどうしても人と関わるのが怖くなってしまいます。その時に「まだ何も起きてない、大丈夫」と思えば「そっか」と納得でき本来の自分らしい動きが出来るのです。

自分らしい動きが出来れば、心に余裕が出来人間関係にも余裕が出来るのだと思います。

 

そして当たり前だけど大切な言葉「ありがとう」を、心を込めて言うようにしています。謝罪以外で「すみません」という言葉を「ありがとう」に変えるだけで相手も私もとても気持ちよく会話が出来、自然と笑顔が出てくるようになる気がします。笑顔と「ありがとう」は色んな事を飛び越えてくれますし、何より自分が心地よい気分になるのです。バタバタとしている時ほど「ありがとう」を使ってみて下さいね。

 

「大丈夫」と「ありがとう」を自分の言葉にし、「でも」と「かわいい」をなるべく排除し過ごしていると人間関係がとても楽になった様な気がします。
そんな人間現関係をテーマに今回の「マイフレーズを持つ」を入れて今後12回、まとめていこうと思っています。「何をしたら嫌われる」「物言わぬ言葉代わりの仕草」「場の空気の気流を変える」など何か気になるテーマがあれば、とても嬉しいです。

 

ではまた‪次の日曜日‬に。

 

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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