飲食経験ゼロのイラストレーターが、カフェをはじめる。

岩上 喜実

書店員をしながらイラストレーターとして働いていた32歳の頃、今のノンカフェという飲食店を始めました。それまで周りに飲食店をしたいなんて言ったこともなく、飲食店経験も大阪で数ヶ月バイトしていただけのイラストレーターが何故カフェを始めようと思ったのか、実はずっと自信が無く心の中に閉まっていたのですが先日カフェが5周年を迎えひとつの気持ちの整理が出来、やっと人前で始めたキッカケを言えると思い始めました。 

「ここに来たらホッとするという空間を作りたい」このひとつです。

 

イラストを描く時はいつも「このイラストを見て誰かがホッとしますように」と描いていますし、イラスト教室も「ここに来て描いているとホッとする」と思って頂けたらなと思っています。私の仕事の目標は、人に刺激を与えることでは無く、日常の中のトゲトゲしたものを少しだけ丸くしたい、という事です。

しかしホッとしてもらいたい、このためだけに彼(現主人)や家族を巻き込んで良いのか。そして他の飲食店から見たらオママゴトと思われるんじゃないのか。それよりお店は続けていけるのか。5年は必ず続けていつか人前で言えるときが来るまで頑張ろうと思っていました。

 

6年前の今頃、カフェをするキッカケとなった今の場所の居抜きの話からスタートしました。ぼんやりとしていた目標がかなり具体的になり、ノンカフェの前のカフェのオーナーさんと話をする度に動悸が収まらず楽しそうなんてひとつも思えず準備に取りかかりました。何よりそのカフェは市内でも人気のお店で、その後に入るというプレッシャーもありました。

準備をするには一人ではもちろん無理で、彼が沢山色んな所に出向き話を進めてくれ、申し訳なさと焦りで毎日ずっと「本当に始めるの?本当にできる?」と泣いてばかりいました。経験も頭脳も資金もなく、あの頃の自分が今私に相談してきたら「辞めた方がいいと思う」と伝えるくらい頼りなかったと思います。

そして一番の誤算は居抜きの物件が想像していた広さの3倍はあったこと。二人くらいの従業員でと考えていたのが一気に3倍になりました。人を雇うこと、メニューを決めること、売上げ目標を立て、営業すること…どれも手探りで何から初めて良いのか分からないまま準備はスタートしました。

まずはお店の方向性作りからメニュー構成を考えたのですが…それはまた次回に。

イラストレーター編と同じように、この仕事をしてみたいという方が増えたり興味を持つ方が増えたらと思っています。そしてこんな素人が無知ながら沢山考えてきたという事を、将来お店をしたいという方の自信になればと思います。誰にでも夢を叶える権利はありますが、やるかやらないかはキッカケだけだと思っています。やる方が正解ではないし、正義ではないのですから。ただ、やるなら最後までやる、それは正義だと思います。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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