「ゴールドティーマイスターのお仕事とマネージャーのお仕事」

遠藤 麻衣子

今日は、私のお仕事について少し書いてみたいと思います。長くなるかもしれませんが、読んで頂けたら嬉しいです。

私の会社はコーヒーカンパニーです。私は紅茶の部分を担当していて、ロンネフェルト社のゴールドティーマイスターとして、ティーセミナーやお客様への紅茶のカウンセリング、アドバイジング、紅茶のプロモーション販売なども行います。セミナーは1ヶ月にだいたい3本前後、多い時は5本くらい。3年前くらいまでは毎月8〜10本行っていた時期もありました。

当時から紅茶担当以外の会社での役割がありました。「フォレスタ」というお店のマネージャーです。フォレスタは複合施設で、大きな建物の中に、

ピッツエリア&カフェ「ジャルディーノ」
タルトショップ&ケーキ工房「シエル」
ブーランジェ「パンコバ」
ロンネフェルトティー&ギフトショップ「ラバールプラス」
ローステリア「焙煎工房本池」

の5つの店舗や工房があります。2階には「ラバール」の本部になっていて、デザイン部門や経理部門などがあり、インターネットストアも運営しています。その店舗、部署ごとに店長やリーダー達がいて、マネージャーは営業店舗を統括する役割です。

紅茶のお仕事もしていますが、このフォレスタのマネージメントが現在のメインのお仕事となります。

「マネージメントとは???」と思い、その言葉をインターネットで調べてみたら「人員・物・金・時間・情報などの使用方法を最善にし、うまく物事を運営すること」「そのようにして企業を維持・発展させていくこと」「経営管理」と書かれていました。なるほど・・・つまりは、このフォレスタという複合店舗を運営して、いい状態に保つこと、発展させることがミッションということです。

マネージャーになったばかりの頃は、本当に失敗ばかりしていました。頑張れば頑張るほど空回りしてしまったし、お客様との時間も大幅に減り、スタッフとの意思疎通もとれず、色々なことに対応できなくなり、お客様からもスタッフからも信頼を失いました。何をやっても上手くいかず、悪口、陰口もたくさん言われました。そんな状態ですから、お店から去って行く人もたくさんいました。

私は、人よりも紅茶の知識はありましたし、店長経験もありましたが、こんな大きくて多岐にわたる店舗の、こんなにたくさんのスタッフの「マネージメント」というものをメインで担うのは初めてのことでした。あまりに苦しくて「マネージャーを降りたい」と社長に申し出た時、いつもはとっても優しくて温厚な社長から「そんなに簡単に降りられるような役割ではないし、こちらも軽い気持ちで任命しているわけではないんだぞ!!!」と大激怒されました。見たことがないくらいの初めての社長の激昂ぶりに驚き、落ち込み、もう一度よく考え、思い直しました。

わからないことばかりだったので、マネージメントについて書かれた本をたくさん読みました。悩んで迷って社長や他のマネージャーさんに相談したりもしました。機会を見つけては他の会社の経営者さんやお店の管理職の方のお話も伺いました。

一番、最初にやったことは・・・
「もしもスタッフの誰とも意見が合わず、全員が去っていて、最後の1人になっても、それでも自分だけでお店をオープンする」という“覚悟”を決めました。

私はバリスタもできないし、ピッツアも焼けないので、1人になったら、お客様にお詫びして、紅茶だけ提供しよう・・・と心に決めました(笑)。そのためにも「私がここにいる誰よりも、お客様のことを、スタッフのことを、お店のことを、会社のことを想っている」と胸を張って言える自信を持つことにしました。
周りからはどう見えても、どう思われても、自分が自分にそう言えたらいいのだと言い聞かせました。

そうすると不思議と迷わなくなりました。一時期は自分がスタッフからどう思われているか気になってスタッフの顔色ばかり見てしまい、発言や指示が弱くなっていたのが、お客様の表情にだけ集中できるようになり、お客様にとってどうかで判断できるようになると、どんなに反対されてもイヤな態度をとられても全くブレなくなりました。
私もお客様のためにと思ってトライしたことが、間違っていてお叱りを受けたりすることは、もちろん今でも多々ありますが、それでも、その時に自分なりに考えたベストをできるようになっていきました。そして、間違えても反省して改善すればいいだけだという開き直りに似た(笑)、根性も据わったと思います。

「私と考え方が合わない人は、他の部署や店舗、他のマネージャーを選ぶことができます。もしくは、私よりもお客様とスタッフの事を想ってくれて、業績も上げられると言われるのなら、いつでも私の代わりにマネージャーをやって頂いて結構です。」と宣言しました。そんな私のやり方に合わない人達は去っていきました。もちろん、寂しい気持ちや悔しさが全くないかと言えば嘘になりますが、でも、不思議と吹っ切れたような清々しい気持ちにもなりました。

そうすると今度は、理解してくれる人だけが残り、賛同してくれる人が少しずつ増えていきました。空回りして殻に閉じこもり、ひとりぼっちだと勝手に思っていた時期もありましたが、気付いたら・・・周りには助けてくれる人、守ってくれる人、応援してくれる人ばかりになっていました。あんなに批判されて、悪口を言われていたのに、そういうものも聞こえなくなってきました。もちろん、悪口を言う人がいなくなったわけでも、減ったわけでもなくて、ただ単純に自分の耳に届かなくなっただけで、こんな性格なので今でも言われているとは思っています。(笑)

スタッフとのコミュニケーションもとれるようになっていき、どんどん仕事がスムーズになっていきました。自分も思っていることを素直に口に出せるようになっていきました。そうすると相手も素直に意見をくれるようになり、時には衝突したり、涙したり、和解したりしながら、チームワークが芽生えていきました。勉強会をしたり、ミーティングをしたり、リクリエーションをしたりしながら、少しずつチームとしての考え方を揃え、意見を出し合い、楽しい事を考え、みんながお客様に集中できる環境が整うと、今度はお客様が戻ってこられました。

昨日もランチタイムの3時間ずっと20組近いウエイティングが続きましたが、たくさんのお客様がお待ち下さり、そしてお食事をして下さいました。
私ならそんなにも長い時間お腹が空いた状態で待ちたくないと思うのですが、みなさん、パンやケーキを見たり、コーヒーや紅茶のご試飲を飲みながらにこやかにお待ち下さり、お帰りの際にレジで「長いお時間お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。」と言うと、笑顔で「いいのよ、本当に美味しかったわ」「待ったかいがあったよ。また来るね」とお声掛け下さり・・・本当に嬉しく思い、もっと早くお席にご案内できればと申し訳なくも思いました。

なんて有り難いことなのでしょうか・・・。

なんて幸せなお仕事なのでしょうか・・・。

帰り道に、私と同じように感じていたのでしょうか。飲食部と販売部の2人の店長が「正直、10組以上お待ちですとお伝えしても、ウエイティングボードにお名前を書いて下さるお客様にいつもビックリしてしまいます」「お客様があんなに待ってでも食べたいとか買いたいと思って下さる気持ちを忘れてはいけませんね。絶対に天狗になってはダメですよね。」と言ってくれました。

スタッフがそんな風に言ってくれた時、本当に嬉しくて誇らしくて、胸がいっぱいになります。

ゴールドティーマイスターとして、自分が直接、お客様の前でセミナーをしたり、カウンセリングをしたりできる瞬間ももちろんとても楽しいのですが、自分ではないスタッフが楽しそうに嬉しそうにお客様のことを話してくれる時、仕事の相談や報告をしてくれる時、マネージャーというお仕事は、「管理職」なんて言葉では収まらない、何かもっとこう・・・すごくやりがいのあるミッションのような気がしています。

あんなに大変で、逃げたかったくらい辛かった「マネージメント」というお仕事が、今はとても楽しくて大好きです。

今でも失敗は多いですし、できてないこともたくさんありますが、もっとこうしたいなとかこんなこともできたらいいなといつもワクワクしています。

私はゴールドティーマイスターとして店頭に立つ時は、紅茶たちを「この子たち」と呼びます。掃除をする時に紅茶に話し掛けるので、よくスタッフに気味悪がられます(笑)。でも大切な商品ですし、毎日、見ていると愛着がわいてきて、愛おしい気持ちになり、ついつい話し掛けてしまいます。

マネージャーとしての私の最も誇れる大切な商品は他でもない「スタッフ」です。

美味しい料理もケーキもコーヒーも全て、スタッフが作り出すからです。

スタッフが楽しくお客様の事を考えられる環境を創るのはマネージャーの仕事だとしたら・・・

ゴールドマイスターの私が、いつも紅茶を見つめて話し掛けていたように・・・

マネージャーの私は、スタッフのことしか見ていない、考えていないと言っても過言ではありません。笑

お客様のことももちろん考えますが、私以上に今はそんな自慢のスタッフのみんながお客様のことを想ってくれています。

マネージャーのお仕事はすごく難しいけれど、ゴールドマイスターのお仕事と同じくらい、いや・・・それ以上に、楽しいです。

そう言えるようになったこと、お客様とスタッフのみんなに心からありがとうと言いたいです。

遠藤 麻衣子
紅茶講師、ティーコーディネーター、ロンネフェルト社認定ゴールドティーマイスター、日本ティーエキスパート
大学を卒業後、結婚を期に鳥取県に帰郷し、主婦と仕事の両立をおこないつつ、紅茶を学び、ロンネフェルト社認定「ティーアドバイザー」「シルバーティーマイスター」の試験を共に日本一の成績で合格。2012年秋にスリランカでのトレーニングを修了し、念願の「ゴールドティーマイスター」の認定を受ける。 「1杯のTeaを美味しく煎れることは、自分を大切にすること、1日を丁寧に生きることに繋がる」という信念のもと、紅茶文化を広めながら、女性のためのライフセミナー、企業向け販売セミナーなど県内外、東京でも人気の講師である。
ロンネフェルトティーブティックプラス/ http://ronnefeldt-plus.com
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