あなたに対して敵意はありません

岩上 喜実

焦ってしまうとついやってしまう仕草はありませんか? 

仕事関係の人や知り合いと会話をしている時、家族や気心知れた友人ではないので大なり小なり緊張する事ってありますよね。そしてその場を盛り上げなければ、と思いすぎて普段より沢山話題を振ってみたり、突っ込んでみたり…そして帰る頃にはぐったり、という気遣い屋さんも多いと思います。私も以前は仕事で新しい取引先の方と話すときや、友人から友人を紹介して貰うときなど少し慌ててしまって、緊張感丸出しの仕草を何度もしていたと思います。

 

緊張感丸出しの仕草とは頭をかいたり髪を頻繁に触ったりしてしまうことや、唇をサッと舐めてしまったり鼻を指先でかまったりする事ですが…まずは頭をよくポリポリとかいている人は緊張して毛穴が開き皮膚がかゆくなるため、髪を頻繁に触っている人は他人の視線が気になってしまうため、唇を舐める仕草は赤ちゃんのおしゃぶりと一緒で「心を落ち着かせよう」と不安解消のため、鼻を指先でかまったりする方は本心を読まれたくないため、と言われています。確かに会話をしている相手がそういった動作をしていると、意味は分からなくてもなぜだか慌てて急かされているような気持ちになってしまい話の内容が頭に入ってこなくなってしまうのです。

 

ということは意識した仕草ができれば相手を慌てさせることも無くなり、自分も無理に盛り上げなくても自然体の会話に繋がる、ということなのです。

 

まず仕事の相手と会話をするときにしている仕草は、どんな役職でどんな立場か分からない場合でも目が合ったら少し口角を上げ会釈することにしています。これで言葉は何も発することがなくても「あなたに対して敵意はありません」という物言わぬ言葉代わりの好意的な仕草になるのです。

なぜ意識するようになったというと、私は顔にとてもコンプレックスがあり笑うと1本の線になる位細い一重の目が物心ついた時から嫌で仕方ありませんでした。ボーッとしていても睨んでいるように見えてしまったりどう頑張っても明るく可愛い印象になれなかったので同級生でも上級生や下級生でも目が合ったら先ほどの会釈をするようにしてみた所、私に対して敵意を向き出しにしてくる方はほぼいなくなりました。それから社会人になり色々な世代の方や、色々な役職の方とお会いする機会も多くなりましたがまずはこちらから「敵意はありません」という状況を作ってしまえば、もしトラブルにあっても自然と助けてくれる人が周りに増えたような気がします。

 

ツンツン気取った人にも、何だか不機嫌そうな人にも、私自身は口角を上げ会釈をすると自然と嫌な空気は解けていくような気がします。店長をしているカフェでも、接客で笑顔は基本ですし、電話の時も笑顔で話すと声のトーンが優しくなります。そしてスタッフには怒りに怒りをぶつけては何も生まれないこと、段々周りより年が上になったり立場が上に行けば行くほど周りに親切な存在でいてほしいと伝えています。そして口角を上げ自分自身も楽しく前向きな気持ちになって欲しいと思っています。

そのせいなのか、プライベートで口角が下がって他人のしていることに難癖ばかり付ける方や周りが迷惑していることに気付かない方とは距離を置くようになりました。何だか、怖いですものね。

 

仕草とはその人の考えて居ることや思考が知らず知らずに出てくるものなので、最初は動きを計算し意識して動くことから始め、継続して動いているといつしか自分のものになっていく気がします。初対面の人に睨まれて嫌な思いをしたのなら自分はどんな立場の人でも笑顔で会釈しようという気持ちになりますし、腕を組んでいる人と話をして威圧的な雰囲気に飲み込まれてしまったら自分は手の位置を胸の位置より下げてリラックスしていますよ、と意識してみるといいかもしれません。

沢山思いを話さなくても、動きや仕草で思いが伝わるとより相手の心深く印象付けることができると思います。ぜひ簡単な口角を少し上げる、という仕草からはじめてみて下さいね。

 

仕草を意識してみて次に気になるのは丁度良い言葉のチョイスですが、それはまた次回に。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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