好きなドラマからの映画化された邦画、3選

岩上 喜実

映画を観る事も好きですが、幼い頃観られるテレビ番組を制限されていた反動なのか気になるキーワードの番組は録画しておいて仕事が終わってボーッとしながら眺めながら今の世相を仕入れていたような気がします。世相と言っても今はこんな男性が人気があるのか、こんな歌手が出てきたのか、などエンターテインメントニュースのような感覚で気軽に楽しめるのがテレビ番組の愉しみなのかな、と今も思っています。

そのテレビで楽しんでいたドラマが人気で映画化される場合、テレビの中の持ち味が消えてしまっていたり興行収入を考えてそもそもの設定が変わってしまう作品も多く、少しだけガッカリすることも少なくないのです。

ですがその中でもテレビドラマの持ち味はそのままに、より豪華により広く楽しめ、伏線がしっかり回収されている映画化もある事が分かりました。きちんと完結する、というのがこんなに気持ちの良いものなんだと思えた映画です。

 

「祈りの幕が下りるとき」(2017)主演:阿部寛 松嶋菜々子

連続ドラマの劇場版ですがしっかりとドラマを観ていなかった私でも予告編から気になっていたのは、先に原作を読んで頭の中の配役がフィットしていたので是非観てみたいと思ったからなのです。この映画を観終わってから逆パズルのようにドラマも観たくなって観返し、そしてこの完結編と言われている映画を再度観る、という事をする程内容も展開もエンターテインメント性が高くこれぞドラマの映画化と思った作品ですが…いざ観終わるとこんなに声が出るほど泣いた映画は久しぶりで、主演の二人も良かったですが美人演出家の役である松嶋菜々子さんの10代を演じた少女と父親役の小日向文世さんのシーンではあんないつも小気味良い笑顔の小日向さんが奥から出る父親の男気が出るとは思っておらず驚きと切なさで涙が止まりませんでした。

内容は原作の東野圭吾さんらしい組み立て方で、それがしっかりと分かりやすいように映像となりどの世代の方でもストーリーが頭に入っていきやすいように構成されているのでしっかりと連続ドラマを観ていなかった私でも分かるくらいの邪魔にならない位の丁寧なテロップと無駄がない進み方でとても観やすい映画でしたが、目は腫れてしまうし泣き疲れてしまうし、どっと疲労が出てしまうけれど何故かふとあのトンネルのシーンで号泣した事を思い出し泣きたくなる時に観たくなる映画です。

前作の「麒麟の翼」(2012)も救いようがないほどの悲しさと、その中でのほんの少しだけ救われる描写が何度も観たくなる映画でしたが、この「祈り~」はシリーズの完結として素晴らしい終わり方だったと思える映画でした。

 

「SP 野望編」(2010)「SP 革命編」(2011)

前回の好きな映画をまとめた時に「踊る大捜査線」がとても好きすぎて公開した映画を観に行った時に楽しみすぎてオープニングで過呼吸になり救急車に運ばれた事がある。という事を書きましたが、少し大人になってから何であんなに夢中になったかを考えると適度なドキドキ感とキャストの動き、ギャグ要素とシリアス要素のバランス、そしてオープニングや何かの出来事で使用される音楽の使い方に引き込まれていたことが分かりました。

この「SP」シリーズもテレビドラマの時から内容よりSPという仕事の動きや音楽にドキドキとハラハラさせられていてそれが何故かちょっと癖になる、という状態になる事に気が付きました。特にアクションが好きでも、原作が好きという訳でも無かったのに、どちらもきちんと劇場で観てドキドキ、ハラハラして、終わって劇場から出ると日常に帰るあの感覚が味わえるのはやはりエンターテインメント性がある邦画を観るのが私には合っているんだなぁと思えた映画でした。ちなみに、続編がありそうな終わり方だったので期待していたのですが無さそうなので消化しないといけないなと思っている映画です。

 

「コンフィデンスマンJP」(2019)主演:長澤まさみ

ここ数年離れ気味だったテレビドラマの中ではヒットしたフジドラマの映画化した作品は、この監督の魅力マックスともいうべきスピード感あるエンターテインメント性が高く見応え充分でした。信用詐欺師3人組が悪党金持ちを狙い大金や宝石を手に入れるために騙し合い裏切り合いというドタバタに巻き込まれていく…という王道で痛快というキーワードがピッタリのストーリーはラストの騙し手口を巻き戻しながら、あれもこれも計算だったのかー、と色々な世代の方が肩の力を抜いて純粋にエンターテインメントというべき楽しめる作品なのです。

この肩の力を抜いて、というのが映画を観ながらする事が意外に難しく観ていてもどこか「見逃して損をしたくない」と思って神経を張り巡らせてみたり「リラックスして観よう」とおもっても内容やキャストのズレなどが気になってあら探しをしてしまうのですが、この映画はドラマより勿論スケールが壮大にはなっていますがドラマ同様、何となく身を任せて面白がっても大丈夫と思わせてくれる映画でした。

主人公の長澤まさみさん始め男性も女性も、ちょっとした役で出る色々な人もキラキラしている方ばかりで画面から不思議と元気をもらえる、そんな楽しくも面白い気楽に観る事が出来て後味がすっきりする映画でした。綺麗な人達がクルクルと万華鏡のように回りながら高速で話が進む感覚を、1分たりとも無駄にしない感覚が痛快で内容を忘れた頃にもう一度騙されたくなって観たくなるような作品でした!

 

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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