澄み切った重さのあるBGM
カフェ店内で動いていると、様々なお客様の会話が耳に入ってきます。それは内容や細かいところは勿論聞き耳は立てませんが、「何だか楽しそう」「何だか重い話をしておられる」「何だか相談事をされている雰囲気」などそのテーブルごとにストーリーがあり、そこに他のお客様の話し声やコップを置く音、カフェスタッフの声などが合わさり、そこにBGMとして店内を短編映画のように雰囲気を作ってくれるアーティストがいます。
メロディなのか声質なのか、それともどちらもなのかは未だにはっきりとは分かりませんが、ただコーヒーを飲みながら本を読んでいる風景もこの方のBGMで世界がセピア色になったかのような気持ちの良い違和感がクセになってしまいます。
店内におられるお客様もそれを無意識に感じ取って下さっているのか、少しバタバタしてしまうランチタイムや週末の立て込んだディナータイムも、どこかゆったりと気持ちの良い時間を過ごされているような気がします。世代やその人のキャラクターを超えて、この方のBGMは何故かそうさせる雰囲気を持っているのだと思います。
Norah Jones(ノラジョーンズ)
全世界で2,300万枚セールスの1stアルバムから一気に世界中に知れ渡った彼女は1979年ニューヨーク生まれのピアノ弾き語りジャズシンガーでありジャズピアニストでもあります。両親も音楽関係者なので幼少の頃から膨大な量のレコードを聴き、曲調はジャズをベースにソウル、カントリー、フォーク、ポップスなどを取り入れジャズ界のポップアイコンとも呼ばれている実力者です。
特に代表曲ともいえる「Come Away With Me」に収録されている「Don’t know why」(2002)は数々の賞を獲得し、今でも様々なアーティストがカヴァーし名曲を繋いでいるのです。特にこのアルバムは1stアルバムにもかかわらず〝これぞノラ〟という1枚になっており、その後何枚もCDをリリースするのですがピアノは勿論エレキギターやオルガンなど、どんな楽器を使いメロディラインを変えても1stアルバムのノラ・ジョーンズをチラチラと見せてくれそれが何故か安心する不思議なアーティストなのです。
容姿も映画の主演をする程魅力的な顔立ちで、歌を歌う以外の声質もスモーキーで耳に残りやすい音で日本人が好むハリウッド女優のようなイメージを持たせてくれます。
初期のしっとりした時間をくれる曲が聴きたくなったら1stアルバムか、それより少し澄み切った重さがどっしりと胃に落ち着いてくれる曲が流れる2stの「Feels Like Home」(2004)もお勧めです。中にはカントリーが流れる曲もありますが、1枚を通して少し地味な印象もあるのですが永く愛されるアルバムだと思っています。現に発売から14年経った今も聴きたくなる事が多く、何度聞いてもダサくなる要素が全く無いのですから。
それから少し時は経ちリリースされた「The Fall」(2010)は、重さはそのままに少し味わいが変わった赤ワインを飲んでいるようなまどろみを感じる1枚ですし、「Day Breaks」(2016)は全体を通してウェットなドライ感を感じることもできます。
澄み切った重さや、ウェットなドライ感など相反する言葉の組み合わせがしっくりハマるメロディと歌声は人としてどうあるべきか、しなければいけない事を諭しているような恍惚ともとれる高揚感を感じることも出来ますし、その反対で人としてどうあるべきなんてどうでも良い、しなければいけない事なんて大切な人を愛し傷つけない事だけ、という絶望にも似た希望を感じることが出来ます。
それが世代やジャンルを超えてゆったりと余裕を持たせてくれるBGMにしてくれているのかな、と思うことがあるのです。
よかったら是非聴いてみて下さいね。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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