人を雇うという責任と覚悟
接客経験やメニュー構成や事務的な事は年数を重ねる度に要領が分かってきて楽になるのですが、未だに悩みどころが多いのが「人を雇う」という事。それまでイラストレーターはフリーでしていたので忙しくなるのも暇になるのも自分自身が大変になるだけで特に悩んだことはありませんでしたし、書店員の頃は書店に雇われていた身でしたので悩んだら直属の上司に相談し、ある程度勤続年数が長いと自由に判断させてくれる書店だったので「人」で悩むことは特になかった気がします。
カフェのオープン5ヶ月前に信頼できる料理人に出会ったのをきっかけにスタッフを募集したのですが、何せ面接をするのも初めて、しかも飲食店経験が無い私が何を聞いて何で判断して良いか分からずハローワークの方のお話を聞いて「お店のイメージに近い人」で採用しました。正社員、パート、バイトとこれも初めてのシフトを作成し社会保険や健康保険などの申請し、慌ただしくオープンを迎えたのを覚えています。
今思い出しても、この時のスタッフには大変申し訳ない思いで一杯になります。店長の私が経験値ゼロな為、経験豊かなスタッフに聞き呆れられ、まともなマニュアルも作れず、毎日がトラブルの連続の中オープン景気も重なり、閉店後毎日泣いていました。スタッフの中でもイライラしている人が増え、それに耐えるスタッフも増え、うまく処理できない自分に悲しくなり「どうしてカフェを始めようと思ったのだろう、色んな人に迷惑をかけていて、あのまま書店員とイラストレーターで良かったのでは無いか」とずっと悔いていました。
ホッとする空間を作りたいと思っていたはずなのに、スタッフが誰一人ホッとなんか出来ず、お客様にも迷惑がかかってしまう。そしてネットでは叩かれ、年末の忙しい時期なのに数字には反映されず疲労ばかり重なり、パートナーとも売上の話で険悪になってしまう。全てが悪い方に向かっていき、仕事中に泣きそうになることもありました。
誰も私の指示なんて聞かないし、上手く伝えられない。人が怖くて、接客業が出来なくなるのではと心底落ち込んでいた時に、一人のバイト面接をしました。彼女は経験もあり、目標もある。初めて会ったときから何故か一緒に働きたいと思い採用しました。
彼女の高い意識に引きずられる様に、やる気のないスタッフは辞めていき、他のスタッフにも見るからに仕事に対して意識が変わっていったのを覚えています。目の前がモノクロのように白と黒の世界だったお店が、色が着いた様に活気づいてきたのです。余裕が無かった私を支えてくれた彼女のおかげで、今お店が続けていられると思っています。お店を始めて沢山の人に傷つけられ裏切られてきましたが、私が彼女に救われた様に助けてくれるのも人だったのだと思います。
その彼女が数年間お店の事を一緒に考えてくれ話をし続けた中で人を雇うのは会社の役割で、スタッフ一人一人の役割や想いや目標をできる限り汲み取り、少しでも働きやすく対話し、褒め、そして注意ができる店長でありたいと目標が出来ました。
つまり、私には人の責任を負う覚悟がオープンの頃は無かった事に気付いたのです。
私は、自分がもう一人いたらとずっと思っていました。お店に対する思いや目標を分かってくれ動いてくれる自分を。ですが私の分身を作るのでは無く色んな個性のスタッフの「お店を良くしたい、お客様に楽しんで貰いたい」という気持ちを出し切れる環境を作っていけたらと思っています。そう考えたら注意ひとつにも責任が持てるようになりました。
人を雇い指示するのは未だに難問が沢山ありますが、以前のように明日をどうにか乗り切る指示指導では無く、そのスタッフが1年後あの時注意を受けておいて良かったと感じてもらいたいなと願っています。それが積み重なり信頼できるスタッフが増え、オープンしてからここまで自分なりに出来た考えを軸にし、ひとつずつ新たな難問を解いていきたいなと思っています。
そして未だに悩んでいることといえば、営業方法もそのひとつ。
飲食店はそんなに営業しているイメージがないのですが、するとしないとでは大違いです。それはまた、次回に。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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