自分だけの永遠に愛せる雑貨 ⑪お鍋

岩上 喜実

趣味は何ですか?と聞かれたら読書とお料理と答える程度に、お料理は好きな方だと思います。ですが最初から好きだった訳では無く、続けていく内に「もしかしたらお料理をするのが好きかもしれない」と徐々に感じてくるようになったのを覚えています。

最初は出汁の取り方を母から教わり、基本的な手順から手抜きの方法、その料理によっての野菜の切り方などを、世間話をしながら覚えるのがとても楽しかったので、その延長でお料理をする事が好きになっていたのだと思います。 

最初の頃は野菜の皮むきから下処理などをし、食材の相性の知識が増えてくると冷蔵庫にコレがあるからコレと合わせて…と献立が組めるようになり、仕上げに彩りを考えるようになり、素人感覚ですが食感や栄養素も考えられるようになりました。

どうせだったら見た目も楽しく、食感もサクサクだったりシットリだったり変化のあるものにして「外食もいいけど、やっぱり家のご飯がいいなぁ」と言われるような献立を作れるようになりたいと思って積極的にお料理を楽しむようになったのです。

 

そして10年前、そろそろ自分のお鍋を買おうと決めて色々ネットやお店を回ったり料理本を見た結果『ル・クルーゼのお鍋』に決めたのです。実際持ってみて当時は重さに驚きましたが、何だか美味しい物が作れるような気がするという不思議なポジティブアドレナリンが出て「買おう!」と決めました。サイズより先に色への好き嫌いが強い私は、レッドやグリーンなどカラフルなものは創作(お料理)する場面には欲しくないので必ずブラックかホワイト、と決めていました。ただ白だと焦げなどが目立つので当時限定色だったツルンと光るブラックに決め、サイズは二人分だとやや大きい24cmを購入しその日から早速使い始めたのです。

それ以来沢山のお料理に使ってきましたが、たまに焦げがついてしまうことがあっても重曹で洗えば簡単にスルンッと落ちますし、スープはもちろん煮物や揚げ物、ご飯も炊くことが出来、鍋ごとそのまま食卓にも出せるので使い始めて10年になりますが特にストレスがないのです。ただ二人で大きすぎたのでその後20cmもお揃いのブラックで購入し、料理に応じてル・クルーゼを楽しんでいます。

 

今では様々な国から魅力的なお鍋が出ていますが、フランスで1925年に生まれたこのル・クルーゼは愛され続けたこのフォルムは守りつつも少しずつ使いやすいように変化しているのも魅力的だと思います。店頭で最近のお鍋を持ってみるとハンドル部分がやや広くなっていて安定感が増していたり、エナメル加工もより傷が付きにくくなっているのです。もう一つ購入しようかな…と思わせる老舗の進化とは面白く、常に憧れられる地位にいるというブランド力の継続も何て素晴らしいんだろうと思います。

 

私は全てのことに継続する人は素晴らしいと思っているので、歴史ある工場や会社、そしてブランドが進化し続けながら現在進行しているのは本当に素晴らしくその努力をのぞき見してみたいとも思います。


今では数ヶ月〜数年同じ事をしていたというだけで分かった気になる人が多いと聞きます。私もカフェの店長をしているので何人もそういった方を見てきて色々感じてきましたが、様々な考えの方がいて当然だということなんですよね。

私が継続を美とすれば、逆に沢山の職種を経験して分かる事を美とする人も居るのです。ただ、その美とするものがぶれないよう努力することが大切なのだと感じます。

他の人のやり方に文句を付ける前に、自分の美とは?と立ち止まって考えてみるのが最近は面白くなってきているのです。

 

ル・クルーゼのお鍋はそういった事を思わせてくれるお鍋なのです。

歴史の中には何かの教えがある、参考にならないかもしれませんがこういった視点で調理器具を選ぶのも楽しいかもしれません。

 

では、また日曜日に。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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