自分だけの永遠に愛せる雑貨⑩文房具

岩上 喜実

イラストレーターという仕事をしているからなのか、学生の頃から落書きが好きなせいなのか、何故かシャープペンシルや紙には「これでないと描きづらい」という品があります。限定品でも特別高級品でも、ましてや入手しにくい品でも無いのですが、どれも長い期間世界中から愛されているのが分かる、そんな文房具雑貨ばかりなのです。 

イラストの下書きをしたり、テレビを観ながら落書きをしたりする時にはお気に入りの『ロットリングのシャープペンシル』を使うようにしています。不思議なことにそのペンを使うとただの落書きがイラストのお仕事のラフになっていたり、考えなく手を動かしていると何となく完成に近い構図が出来上がっているのです。

イラストレーターとしてのお仕事を頂くようになった時にもこのペンを使用していたので、ちょっとした験担ぎの意味も込めて使用しているのかもしれません。もう販売していない物なので持っている1本のペンを大切に使っていたのですが、仲良くして頂いている文房具屋さんの店長さんが出張の時に見つけて数本購入してプレゼントして下さったのです。私にとっては高級なバッグやダイヤの指輪より嬉しく、大切に使っていこうと思っています。


ロットリングとは、ドイツの文具メーカーで製図用の万年筆などが有名です。そのためシャープペンシルも製図用が多く、他社のシャープペンシルより細身のフォルムでありながら滑りにくいグリップと細長い先端の口金が特徴的なのです。

ボディがホワイトなのも私の中では大切なチェック項目で、紙の色と同じ色のシャープペンシルを使うことで描きだした芯の色だけが目に入り邪魔な物が一切気にならなくなるのです。集中力が長く続かない私には『邪魔者がいない空間』というのがとても大切なので、そういった意味でもとても相性の良いペンだと思っています。

 

そしてそのペンで下書きをするのは『マルマンのクロッキーブック』です。

文房具屋さんに足を運べば必ず棚にあるクロッキーブックですが、マルマンは紙へのこだわりが強く書き心地や強度など機械では計りきれない『人』が関わる紙ならではの安心感があります。このクロッキーブックは使い続けて20年以上になり、とっておいた冊数は80冊以上になりました。過去のクロッキーを覗いてみると、苦悩していたり、ペンが良く走っていたり、文章が書いてあったりと自分の半生が綴られている日記のようでした。ずっと買い続けられる安心感と、紙の上でたまに起こる奇跡と、長年連れ添ってきた愛着がこのクロッキーブックには詰まっているのだと思います。

スケッチブックやクロッキーブックでお悩みの方がいたら、まずはこのマルマンをお勧めしています。

 

最後は2本のツリーのロゴマークが有名なフランス生まれのRHODIA(ロディア)のメモパッドです。写真のホワイトはブランド生誕80周年を迎えたときに登場したものですが、表紙がブラックのものは長年愛用しています。

まずは表紙がロディア独自の撥水加工がしてある安心感と自分にあったサイズが選ぶことが出来る利便性があり、中の格子線は色味が柔らかく文字を書いてコピーしても写りにくい作りになっています。ラフを描くときに定規は持っていないけど真っ直ぐの線が描きたい、という時にもロディアの使いやすさを実感します。

似ているメモパッドは沢山ありますが、やっぱりこのロディアがいい、と思えるのは期待を裏切らない信頼感の上で何かを生み出したり、頭にインプットしたりする時にメモする大切なツールとして使用するのだと思います。

 

文房具を選ぶときは、新鮮さや目新しさより利便性や歴史を考えてしまいます。

私にとって何かを描いたり記しておくのは、アウトプットとインプットの両方を行うことなのでより安心感のある文房具を選ぶようになったのだと思います。

ですが新しい物や、今まで使用してこなかった物にも何かの発見があるかもしれない、と思いながら毎回文房具屋さんでヤキモキしてしまうので次回足を運ぶ時は、今まであまり見ていなかった棚を覗きに行こうかなと企んでいます。

 

では、また日曜日に。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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