ありがとうを形に

岩上 喜実

大切な人に贈り物を贈る習慣がありますか?

クリスマスが近くなると街の中がいつもより華やかでついつい雑貨屋さんなどのお店で長居してしまいます。そんな時一緒に働いているスタッフや、たまにランチをする友人、離れている家族などを思い浮かべて「これ、あの人が好きそうだな」と自分の物より他の人に贈り物をしたくなる時がありますが誕生日や何かのお祝い事でもない限り、急に贈り物を渡すと驚いてしまう人が多いですが、そんな時私は財布の様子を見て大丈夫そうなら何の理由が無くても購入するようにしています。

それは冷え性の人に暖かい靴下やリラックス効果のあるアイマスク、仕事で忙しい人にさっと溶かして飲める野菜スープや飲み物、ちょっと環境が変わった人には気分が落ち着く柑橘系の香りのハンドクリームや生活に関するイラストエッセイを…そんなに張り切ってお渡しする物ではないのでお返しの心配が要らないようにある程度の金額を設定して、軽くラッピングをして贈るようにしています。

理由を聞かれても何にも理由はないのですが、ただあなたのことを想って選んだ物を贈るのは、贈る側の自己満足かも知れませんが感謝の気持ちが少しでも伝わったような気がして安心するのです。「ありがとう」を言葉で伝えるのが難しい恥ずかしがり屋の方こそ、贈り物を贈る習慣があれば上手く伝わるのになぁと思ったりもしています。

以前書店と雑貨屋に勤めていたのでクリスマス前は勿論、日々贈り物で悩まれる方の対応をする事が多かったのですが、悩まれる方は大きく二つに分けて「相手の方に喜んで貰えるような物を贈りたい!」という方と「迷惑にならない物を贈りたい」という方に分かれていたのを記憶しています。どちらの考え方も相手を想うことで悩まれているのですが、そんな時意地悪な言い方ですが自分が何かを贈ってもらった時、○○が欲しいと言っていなかったのに○○を贈って貰ったことは滅多にないと思います。ピッタリ欲しい物を贈ることは本人のアピールを察知したり聞かない限りとても困難なものなんですよね。そうなると出来る限り迷惑にならず、欲しかった物に近い物を贈るという事が悩みの原因になってしまうんです。

まず選ぶ上ではじめに気にしなければならないのは「消耗品か記念品か」の選択です。

目上の方やそんなに深い交流が無い場合、私はその人をイメージしたお菓子やお酒を選び食べたら無くなる物にするようにしています。その時近所の名店でもいいのですが、お取り寄せや少し足を運んだお店に行くのも選択に入れています。逆に遠方の方に贈る場合は地域の名品など地方ならでのものを説明書を付けて贈るようにしています。今はSNSで贈る人の興味のある物や好みの物が分かったりするので、その辺りも必ずチェックし好みピッタリのものでは無いにしろある程度近い物を贈るよう心がけています。そんな難しいものではなく、甘い物の中でも生クリームが嫌いな方には勿論生クリームを避けたお菓子にし、焼酎がお好きなら炭酸のお酒は避け珍しい銘柄を調べるようにします。それが「ありがとう」に繋がるのなら、きっとその作業も楽しい作業の一部になるのだと思っています。

そして近しい友人や同僚に贈る物は普段の生活を見て、もしかしたら欲しいのかもと思う物を観察し推理します。例えば単純なことですが手荒れを気にしていたらハンドクリームやボディクリームが何個合っても嬉しいのですが、保湿力を気にしているのか香りを気にしているのかブランドを気にしているのかを判断します。例えば私自身ブランドに疎いもので自分の好きなメーカー以外のものは知識が薄いのでネットや販売店のHPを見て成分やどんな人がターゲットになっているのかを調べます。もしかしたら40代の方にいくら好みが合うかもしれないからといって10代の方をターゲットにしたメーカーのものを贈るのは何か違うと思っています。30代の方に贈る物なら、同世代をターゲットにした物か少しだけ上の世代をターゲットにした物を選ぶと喜ばれると思います。

そして貰っても嬉しい物かもしれませんが、私は人に贈らない物があります。

目上の方に贈る物で気をつけているのは、本人の希望が無い限り靴下やスリッパは「踏みつける」というイメージがあること、万年筆などの筆記具は「より勤勉であれ」というイメージがあることなどから出来る限り日常に近い日用品は避け、記念になるような名入れのお酒や野菜ジュースやコーヒーなどの趣向品にしています。そして同世代の人には冬に贈りがちな入浴剤などは家族で使う浴槽で使う為出来るだけ避けています。いくら貰って嬉しくてもご家庭で家族に遠慮しながら使う物は気を遣わせてしまう贈り物になってしまうので出来る限り避けています。

そんな時はゆっくりとした時間にホッと出来るようハーブティーや紅茶にしいつでも周りに遠慮することなく楽しめるものにするといいと思います。年下の子で美容を気にしているタイプには少しだけ良いお値段のヘアオイルやリップを贈ることが多く、家の中で楽しみたいタイプにはあまり買う機会のない調味料や、永く使える食器などを選ぶことが多いです。

色々な決まりがあるように思われる贈り物ですが、贈り物を贈りたいという行為がその人に対し日々の感謝を伝えるきっかけになるのが今後の人間関係をスムーズにしたいという希望に繋がるのだと思います。結局物(金)かよとは思わず、ありきたりですが人は人と繋がって仕事をし、人と繋がって生活を楽しくしているものだと考えれば感謝の気持ちを素直に伝える事はとても大切なものなのだと思っています。

これまで何項目かに分けてお届けしていた人間関係についてのあれこれですが、人間関係が今より少しだけうまくいけば今よりもっと楽しい事が増えるような気がしています。それを次回最終回でまとめますね。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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