のんびりとした時間をくれる、邦画5選

岩上 喜実

本を読むのが好きですが同じくらい映画を観るのが好きです。映画館で観るのもレンタルして家でゆっくり観るのも、読書と同じで2時間ほど現実的な自分がいる位置と違うところに一瞬にして行ける楽しさがあり、一時期は朝活として出かける3時間前に起き1本映画を観てから仕事に向かうというルーティンが生まれるほど映画を観ることが楽しい趣味になっていました。お恥ずかしい話学生の頃から英語のヒアリングが出来なかった私は字幕で観る事が徐々に苦痛になり、吹き替えは日本語で話しているのに呼ぶ名前がジョージやリンダなど洋風の名前に違和感が生まれ次第に邦画ばかり選ぶようになっていました。

邦画の良さはどこかかけ離れすぎていない非日常感が感情を揺さぶられ、元気になったり考えさせられたりする点だと思うので、慌ただしい毎日に数時間だけ少し旅をしたい私にピッタリだと思っています。

毎回テーマごとに私が観て良かった映画(邦画)を全12回お伝えしたいと思いまとめてみましたので、有名な作品ばかりですがレンタル屋さんに行き何を借りようかな、と思った時に何か参考になればとても嬉しいです。

今回は疲れる毎日にのんびりとした時間をくれる映画5選です。

「めがね」(2007)主演:小林聡美、市川実日子他

のんびり邦画の代表ではないのかと思っている1本ですが、この辺りの数年は「かもめ食堂」から始まった「のんびり、ゆっくり」映画が増えてきたような気がします。例に漏れず私も好きなテイストなので、休日のお茶の時間や少し早起きしてしまった朝、淹れたてのコーヒーを飲みながら何度も観てしまうのんびりした時間をくれる映画なのです。

小林聡美演じる主人公が海辺の街にやってきて、そこの土地で出会う人達と「たそがれる」術を身につけていく様子が美味しそうな日常料理と一緒に綴られています。へんちんくりんな体操も、海の風景も、まるで一人旅にふらっと出たような気分になれる後腐れ無しののんびり映画です。

間宮兄弟」(2006)主演:佐々木蔵之介、塚地武雄他

世間とは少しずれたような兄弟の楽しく生きるのんびり日常映画で「もう少しちゃんとして~」と思わずにはいられませんが、せかせか毎日動いていた私には当時気持ちを落ち着かせてくれたような映画だったと思います。周りに流されず、自分の好きな事と楽しい事を貫くってやっぱり世間から見ると少し変わり者の扱いになってしまいますが、日常的に見せかけたSFテイストのような(美女ばかり知り合う所も含め)のんびり映画だと思っています。お母様が中島みゆきさん、というのも好きな理由です。

「海街diary」(2015)主演:綾瀬はるか、長澤まさみ他 監督:是枝裕和

可愛い女性を観ていると幸せな気持ちになるので映画を観るときはなるべく自分の好きな顔の女優さんが出ているのを選んでしまいますが、この映画は全員可愛くてそれだけで何回も観たくなってしまいます。ですが勿論それだけではなく、鎌倉の景色やかっこんで食べる生しらす丼、古い家のお風呂のタイルなど細かいところの風景が気持ちよく、それが是枝監督の映画独特のシャープさが合わさって内容をしっかり聞きながらでも、画だけ観ながらの流し見でも心地よく観ることが出来ます。

すーちゃん まいちゃん さわ子さん」(2013)主演:柴咲コウ、真木よう子他

原作は大好きな益田ミリさんですが、映画は全く別物として観てみると当たり前の日々の中で少し傷ついたり、幸せを感じるように動いてみたり、若いとは言われなくなってきたけど熟女にはまだ早い世代の女性が観ると友人の毎日を覗いているような感覚になります。恋愛とか結婚とか仕事とか、思い切り踏み込めるほど自信もないし、でも現状で満足しているわけでもないし…でも御飯は美味しいし友達もいる。そんな「でも」「でも」で回る毎日の中で小さな幸せを糧にし、ライフ・イズ・ちょこっとビューティフルがテーマの1本です。大人になってからの同性の気の合う友人とは、恋人や家族とは違う場所で自分を助けてくれているのがしみじみ分かる気分になります。

「レンタネコ」(2012)主演:市川実日子、草村礼子他

猫カフェが世の中に出来て数年経ちあの猫独特の柔らかい時間を人にレンタルする内容ですが、まずは沢山の猫が観られるのと、レトロ可愛いインテリア、市川実日子のゆるい口調でまさにのんびり映画なのです。誰にでも心に穴が空くときがありそこに何か無理矢理埋めなくても応急処置でもいいから温もりのあるものに触れたい、と何処かで考えていた人を上手く突いた映画ですが、仕事としてはどうなのか…あの呼び込み方はどうなのか…など突っ込みは忘れてただただ猫を観てボーッとしたい時に観るのもいいかもしれません。私は少し時間が空いた時に趣味の刺し子をしながら流している事が多い、1本です。

何だか毎日慌ただしくて忙しない気持ちになりがちですが、そこにお気に入りののんびり映画画1本在れば気持ちだけは小旅行の気分になれます。良かったら借りるDVDに悩んだ時の頭の片隅にあれば、とても嬉しいです。

次回は、何だか嫌な気分になる邦画5選です。少し嫌な気分になる映画に出会ったとき、何が自分を嫌な気分にさせるのかを分析するのが少し好きです。お時間在れば覗いて見て下さいね。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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