大人でも沢山泣きたくなる時もある

岩上 喜実

私はとても涙腺に関してはガードが緩いところがあり映画の感動する予告だけで泣くのは日常茶飯事の行いで一緒に行く人を驚かせてしまうことが多々あります。それどころか全く興味の無かったスポーツの試合も、数日間だけ密着したドキュメンタリーを観ただけであたかも数年前から熱烈なファンだったかのように号泣することもあったり、朝の情報番組で以前飼っていた犬と同じ犬種の犬が元気に飛び跳ねているだけで、元気で過ごしてね、とポロポロと泣いてしまうのです。

その様子を何年も見てきた主人は、先を見越して泣きそうな場面になると私が泣いてないかチラチラ見てくるようにもなりました。その位、他の感情よりも泣く感情の敷居が低いというかガードが緩く空きっぱなしなのです。

そんな涙腺の緩い私なので、ドラマを観ているときも制作者が泣かせよう!と思っているところ以外でも泣いてしまったりするのでそういった系統のドラマは目が腫れて仕事に差し支えのないように観る時間を気を付けていたりします。

ですがそれは自らの体験で泣いているわけではなく、感情をドラマに託したからこそ純粋に出る涙なので思い切り泣ききったあとは心なしかスッキリしているような気がします。自分の日常には何も影響が無いはずなのに、こんなに泣いてしかもスッキリしている事が何だかとても楽しくて、悲しいはずなのについつい泣けるドラマを探して観てしまうのです。

「白い春」(2009)

殺人の罪で収監され刑期を終えた男性が事件前に付き合っていた女性の所に訪ねるが病死しており、目の前に現れた少女と周りの人間関係を描いた阿部寛さんと遠藤憲一さんが出演されている連続ドラマです。

愛の形は分かりやすいものあれば、分かりにくくそのまま相手に分からないままのものもあり、様々な形はあれど人を愛するという事が出来た元殺人犯に最終回は疲れるほど泣いたのを思い出します。

「僕の生きる道」(2003)

アイドルが主演で余命1年というストーリーを聞いたときはありがちな人を泣かせようとする物語なのかな、と気楽に観始めたのですが無目的に生きていた男性の身体に癌が見つかり余命宣告をされてからの生きる目的に向かっての行動は、この男性にまだまだ生きる時間を与えて欲しい、と思えるほどでした。側に居る女性の距離感も、映像が通常のドラマより少し無機質な雰囲気にしているのも淡々と心に染みるものがあり単純な余命宣告もののドラマではありませんでした。

「JIN-仁-」(2009)

泣けるドラマの紹介といえば、このドラマは絶対に出てくると思う方も多いと思いますがタイムスリップものがあまり好きではない私でもこれは空想の話のはずなのにそれぞれの登場人物に感情移入してしまい江戸時代に本当にこんな先生がいて、今は簡単に治る病気にしてくれたのは仁先生がいたからかもしれない、と思うほど引き込まれてしまいました。

「とんび」(2013)

直木賞を獲っている重松清さんの原作ですが、何となく地味なような気がしてリアルタイムでは観るのをどことなく避けていたドラマですが撮り溜めておいたこの作品を一気に観て不器用な男同士の家族の在り方や子育ての苦労に何故かいつも泣かされていました。家族において〝女〟として〝母〟として太陽であるべき女性が居なくなってからの親父と息子の物語は、是非男性に観て貰いたいドラマでした。

「コウノドリ」(2017)

漫画にはあまり引き込まれなかったのですが、こちらは毎回毎回妊婦さんの人生背景や赤ちゃんの誕生に泣かされていました。ただ、単純な〝出産は美しい、女性は頑張っている〟という内容ではなく、赤ちゃんが無事に産まれてくることはとても奇跡に近いこと、それを手助けする医者や助産師さんや家族も妊婦である女性と同じくらい頑張っているし素敵だという事にいつも涙が止まりませんでした。

その中で未成年の出産や病気や高齢出産のリスクなど、本だけでは知らなかった事を勉強し無知さに対して恥ずかしくなり、どうにもならない現実の中から出産はスタートだと涙するドラマでした。

最近泣いてないという方、一人でこもって泣けるドラマ観てみませんか?

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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