15分間の愉しさ

岩上 喜実

何となく観始めたのに続きが気になって結局録画してまで観たくなる、半年間もの間飽きさせないように朝の15分だけをうまく次も観たくなるように作成している1961年(昭和36年)からスタートしたNHKの朝の連続ドラマ(テレビ小説)はその都度の評判が社会現象になるほど老若男女がよく観ているドラマなのかもしれません。

かくいう私も、実家に居た頃母が観ていた影響で学生の頃から観ていたのですが、通常の連続ドラマは大体1時間を週に一度、そして3ヶ月で終わってしまうのに対し月曜から土曜まで15分を毎日観ることができ、そして半年間も続くという観終わったあとは登場人物がまるで親戚かのようなそんな親近感さえ生まれ主人公の女優はその役名のまま家では浸透してしまうほどでした。

歴史が長い枠のドラマだからこそ名作が沢山あり、もしかしたらそうでなかった作品もあるかもしれません。ですが未だに覚えている〝私の〟心に残る朝の連続テレビ小説をご紹介します。

「あぐり」(1997)

明治40年に岡山で生まれた吉元あぐりさんをモデルにした洋髪美容院の奮闘記です。このドラマで野村萬斎さんを知った当時の私は端正な顔立ちとその役柄の自由奔放さとユーモラスさ、そして主人公あぐりの明るさに朝からワクワクしたのを覚えています。女性が仕事をすること、世の中に出ること、今の時代では当たり前の事にその時代の先駆者だった方の言葉は胸に残っています。

「ちゅらさん」(2001)

沖縄の力強くのびのびと大家族の中で育った女の子が上京し、看護師として、そして恋に奮闘する物語です。沖縄のたおやかな話し方や、おばぁの愛らしさ、そして東京での周りの人の沖縄の優しさに包まれて変化していく様子は、純粋に楽しい!と思える朝ドラでした。

「純情きらり」(2006)

昭和初期から戦中戦後という激動の時代を、音楽への夢と愛を貫いた主人公の宮崎あおいさんの瞳がキラキラと輝いていて、様々な試練があるのにもかかわらずけなげに生きる姿がとても印象的でした。この作品以降こういった〝重め〟の朝ドラはなくなりましたが、重厚ですが主人公を応援したくなる、朝ドラの原点のような内容でした。

「ゲゲゲの女房」(2010)

今住んでいる米子市のお隣、境港市出身の漫画家水木しげるさんの妻目線で描いたこのドラマは、どん底の貧乏生活であっても「この人と共に生きよう!」とおおらかに朗らかに、そして命がけで支える昭和の愛と青春の物語でした。

この原作の副題は「人生は…終わりよければ、すべてよし!」というタイトルが付いており、極貧生活だった時代は辛かったけれど不幸ではありませんでした、というあとがきにこういった女性と過ごした水木しげるさんはとてつもなく幸運だったのかなと思えたほどでした。

「カーネーション」(2011)

大正時代に大阪で生まれた日本のファッションデザイナーの草分けとして活躍した女性の物語です。20歳で洋装店を開業し、着物の時代に洋服に憧れミシン一つで世の中に洋装のおしゃれを発信し続けた女性の強さと夢を形にしたいという強さにとてつもなく元気をもらえたドラマでした。

「あさが来た」(2015)

その頃の朝ドラは大正時代や昭和時代が舞台の作品が多かったのですが、この作品は連続テレビ小説として初めての江戸時代の幕末から話は始まっていきます。

京都に生まれたおてんばな主人公が大阪に嫁ぎ、のんきで陽気な夫や周りの人に支えられながら時代に先駆けた銀行や日本最初の女子大学を設立していく悲喜こもごもの人生奮闘記です。女性が頑張れるのは、側に居る夫や家族の力がとてつもなく大切なんだなと感じたドラマでした。

今放送されているインスタントラーメンを生み出した夫婦の人生大逆転成功物語を描いた「まんぷく」も、主人公の夫を全力で信頼する姿は朝から胸が高鳴りますし何より笑顔を絶やさない素晴らしさにハッとさせられています。

ほんの15分ですがちょっとした楽しみが心の中で膨らんでいく、そんな時間なのです。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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