文書の体制を「つくる」

岩上 喜実

週に一度読み切れる長さで負担にならないように考えたこういった文章をブログに載せ始めてから、文章の組み立て方や書き方について訪ねられる事が多くなりイラストだけではなくライターやエッセイだけのお仕事も有り難い事に増えてきました。

その時に良く聞かれる「文章ってどうやって作るんですか?」という質問にいつも答えが見つからないままで、正直に言えば頭の中にある様々な経験ストックをずるずると引っ張り出して整頓し、整理し、その上から自分の言葉を重ねている、という答えなのですがその表現が妙に格好付けているような気がして中々言えませんでしたし、今でも言うのは心から恥ずかしいです。

ですが今の時代だけでは無くどの時代どの世代にも自分の文章を作る、という事は少なからず必要とされ自分の価値を上げるのも下げるのもふとした文章に表れるものだとも思っています。文章の仕事が多くなってきたからこそ、その文章を作る私なりのポイントを伝えてみようと思っています。

 

最初に文章を作らなければいけない場合、みなさんはどのように体制を整えていますか?パソコンやメモ帳を開き、言葉が落ちてくるのを待つ…なんて生産性の緩い行程は自分には向いていないと気付いたのは実際にやってみてから気付いたものでした。言葉なんてものは都合良く落ちてはきませんし、落ちてきたとしてもその書かなければならない文章にフィットするような言葉が奇跡のように落ちてくるなんて事は滅多に無いからなのです。パソコンを開くとスラスラと浮かんであっという間に完成するわ、なんて人に憧れますが私は出来なかった側の人間だったのでそのやり方を諦め地道にコツコツと言葉を探し、書きとめ、使い、消費し、そしてその空いた所に新しい言葉を入れていくという作業を続けていくしか無かったのです。

 

その言葉集めとは、読書の中からは勿論、新聞やニュース、雑誌の中から選ぶこともあれば友人との連絡ツールの中にあることもあれば外でお茶をしているときの他人の会話や病院の待合室の愚痴から、なんてものもあります。その中から何か気になる言葉のチョイスや組み合わせや単語を切り取り、自分の頭の中やメモを取り一旦寝かせるようにそっとしておきます。その寝かせた言葉は、取り出す時期やタイミングを間違えないように大切に保管しているので、その言葉に付属や補足をつけたり、より自分らしくなるように言葉のリノベーションをするのもいいかもしれません。

そういったイメージで採取した言葉達を自分の言葉にし、それをパズルのように組み合わせていくのが私の文章を作る体制の整え方の一歩になります。

 

体制が整ったら、次は以下のことを明確に決めていきましょう。

 

いま作ろうとしている文章は全部読み終えた人の中にどういった気持ちや感情を残したいか、というゴール地点を具体的に決めておくことで文章の〝かたち〟が決まってくるのです。文章のかたちというのは、自分はどこからの目線で、そしてどの立場で伝えたいのか独り言なのかを決めておくことで文章の始め方や終わり方が作りやすくなってきます。短い文章は作りやすいですが、長い文章となると難しく感じてしまいますが【どこの場所から独り言を言うか】で簡単に文章は長く作ることができるのです。

 

例えば、〝興味がなかったはずの分野の映画が意外に面白かった〟という文章もこのままだとツイッターに呟いたような独り言の文章になります。これを同世代の人に伝える文章に変えてみると〝ずっと苦手だと思っていたゾンビの映画を彼氏にお勧めされて観てみたら何か良かった〟と分野の詳細、そして第三者が出てくる事で文章にストーリーを持たせているのが分かります。独り言を膨らましてみたり、さらにこの一文の前後に付属を着けることで文章というのは作られていくのだと思います。

 

体制を整え独り言からポコポコと膨らませていけることが出来るようになったら、文章を作るのはとても面白いと思います。是非作ることを楽しんでみて下さいね。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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