自分とは何者かを探る邦画、3選
今日9月1日は年間日別で子どもの自殺が一番多い日という統計があるそうで、あちこちで「自殺はよくない」「いじめとは」といった報道がされています。自殺が良くないという事も、いじめが辛い事は当事者にとっては心臓や脳にガリガリと彫られるように刻まれていて、それも全部含めた所で「死にたい」と思ってしまうのだと思います。
転校生だった私は転校先で1年間無視され、私という存在は無いものだと思いきや机を外に出されていたりという割と定番のいじめを受けていました。その時はもちろん悲しかったし、明日学校に爆弾仕掛けられて破壊されていないかな、とも思っていたし、日曜の夕方は本当に辛くて家の時計の針を壊してしまった事もあります。そして、勿論死にたいと思うこともありました。その時は自殺が良くないことも知っていましたが、とにかくこの場から消えたいと思っていたのを思い出すと、死にたくなるという気持ちが少し分かります。
あの時の私は何者でもないただの子どもで自分の考えというものが無かった気がします。今もそんなに大きな変化はありませんが、ただ色んな人種や立場、そして色んな考えや状況があってそれらをイメージ出来る位の大人にはなってきたと思っています。色々傷つけられたからこそ傷つけたくないし違和感を感じさせたくない。それが私の死にたい、からの先の変化でした。
人はそれぞれの道があって、障害があって、進んでいく。ただそれをいつも考える事ができたらと思っています。
「こんな夜更けにバナナかよ」(2018)主演:大泉洋
学生の頃は障害者や健常者という間にどうしても立ち入れない壁というものがあると思っていて車いすの方を街中で見かけてもどこか見てはいけないような気持ちになり、健常者と呼ばれる側と思っていた私はどう対応して良いのか戸惑いを感じる時がありました。
ですが大人になって自分という人格が確かになり社会に出て様々な人に出会うと、その壁は少しずつ消えていき更に車いすの近しい人が出来た今では何に目を背けていたのか思い出せない程で、きっと自分に何が出来るか分からず助けたいという謎のエゴも合わせて戸惑っていたのだと思います。障害、健常などその線引きはとても難しいですが、五体満足でも気持ちのコントロールが難しい方もいますし、動きが制限される中自分に出来る事をたっぷりと考えて動く方もいるという事で日々を沢山考え同じ人としての当たり前の事をしていきたいと思える事を感じさせてくれたのがこの映画です。
筋ジストロフィーという病にかかりながらも自分の夢や欲に素直に生き、周りに愛されながら日々を真剣に生きた男性の実話を元にしたこの映画は、障害と呼ばれる彼のただのわがままに思える言動や我の強さの中の覚悟や、人に助けを言える勇気も持ち合わせている事、そして大きくないけれど夢をちゃんと持ち正直に生き、人は出来ない事の方が多い事を知っている。
何より自分の母親には母親の人生がある事を知っている強さも持っている。その反面健常者と呼ばれる彼の周りにいるボランティアの若者達の方が色んなものに捕らわれて生きづらそうに生きているのがリアルで、それでいて正直さに惹かれ変わっていく姿に観終わった後、明日は少し楽しく生きられそう、と思える人間ドラマでした。
「走れ、絶望に追いつかれない速さで」(2016)主演:太賀
映画好きの学生が撮って少し上手くいった単館系の映画かな…と思って前情報もないまま観始めた映画です。スマホのムービーで友人の送別会の様子を映す最後の学生飲み会から始まり、何故かその友人の一回忌に出ている主人公。この様子からして「あ、これはオチのない映画の始まり方かもしれない…」と観るのを一度止めようと思ったのですが、主演の太賀さんと自ら命を絶った友人の学生時代のダラダラした同居生活の何とも言えない懐かしさと、都会が朝焼けに包まれていく映像、そして音楽が良くて停止ボタンを押せずにそのまま最後まで観てしまいました。
これは賛否あるし好き嫌いがあるかもしれない映画ですが、好きな絵を描くことを仕事にするのを諦め社会人として大阪に旅立った後自ら命を絶つ友人の気持ちが同居人である主人公にも分からず、その当時付き合っていた女性にも分からず、後に残されたものの空虚感がふとした映像の美しさに寂しさが増すような映画でした。
私にも専門学生時代の友人が絵を仕事にしたくて、でも出来なくて自ら命を絶った人がいます。何を思っていたのか、何を考えてその選択をしたのか今となっては何も分かりませんし知っていてもどうすることも出来なかったかもしれません。ですが知りたかった後悔はずっと心に残っています。残された者は食べて、泣いても食べて、生きていくしかないのだと思い出した作品でした。
「何者」(2016)主演:佐藤健
話題になった「桐島、部活やめるってよ」と同じ原作者の就活をテーマにした人間模様の群像劇で、キャストや音楽が話題になっていたので映画館に足を運んで観た映画でした。内容は単純に就活する男女数人が絶望や嫉妬を交えて少しずつ殻を破っていく…という青春にはありきたりなストーリーの中に、SNSを活用した個々の意見のはけ口や主張を隠しながら、そして溢れながらみっともない姿を自分で認めていくという何だかちょっとした恋愛映画より甘酸っぱいような、ちょっとしたホラー映画より背筋がゾクッとするような不思議な映画でした。
主人公は演劇が好きだけれど就職の為に辞めた真面目なのに内定がどこからも貰えない、裏アカで周りの人を達観しつつ見下している今の時代に多いスマホを片時も離さない男子は同居人がおり、その同居人は天真爛漫で人とのコミュニケーション能力も高く活動していたバンドでファンもいたり、秘かに好きだった人と付き合っていたりと憎めないけれどアラを探してしまう。秘かに好きだった女子も、その友達も、就活という同じ目標がある中集うようになるが端々で気になるところもあるけれど、腹割って話せるわけでもなく、いつのまにか「俺はみんなとは違う」とどこかで思ってしまう。
みんな同じ足取りで歩くことを指導されてきた学生から、自己アピールをしつつ規定は守らなければ行けない社会人になる時のあの不安定な心は誰しもあるもので、特に何社も不採用の通知を貰っている者からしたら自分の今までも、そしてこれからの未来も全否定されているようで吐き気がするほど真っ暗闇の道を歩いているような感覚になるのだと思います。それを照らしているのは頼りないスマホの画面だけで、目の前の大切な人達より支えにしている不安な様子を、とても面白く観ていました。
自分はまだ、何者でもないと嘆くよりそう思えた時こそスタートだと皆が思えたら暗闇の中の光は道を照らしてくれるのだと思います。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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