関係性の角度を意識して日々演じる

岩上 喜実

あなたは、ずっとあなたのままでいいなんて思っていませんか? 

いつも自分らしく過ごす事ほど幸せなことはないと思いますが、明るい社交的な学生生活から色んな世代の人と共に仕事をする社会に出た時、明るい社交的な学生の時のままの自分でいることで上手く人間関係が回らなくなることがあります。そしてそれは社会人1年生の時だけでは無く、女性だったら結婚した時や子どもが出来た時に、苦手だと感じる人と「出来ればあまり関わりたくない」けど「どうしても関わらなければならない」といったどう接して良いか分からない状況が人間関係のストレスになるのだと思います。
いつも自分のままで全てが上手く運ぶのなら問題は無いのですが、大人になればなる程色々な人達が自分の考えを持って動いているので、自分一人だけありのままで動くことが「許されなく」なってくるのだと思います。そしていつもの自分で対応しようと思ってしまうと上手くいかなくなった時に落ち込んでしまい人間関係が怖くなってしまうと思います。

そんな時いつも自分らしさ100%でいるより、自分の立ち位置を人によって分けるということをしっかり頭に入れていると無駄に疲れなくなるという事が分かりました。

 

例えば会社だと「会社」という舞台で自分は「会社員」という役者、そして役柄は何なのかを分析しておけばいつも同じ角度で舞台という「会社」を見ることが出来ると思います。それは新しい状況になった時一番先に自分以外の周りの人間関係を観察し、空いている役柄を探すことから始まるのですが全体像を俯瞰(ふかん)で見ることによって空いている役柄という「立ち位置」が分かり自分の無理の無い範囲の役柄を設定しておけば無駄に張り切りすぎることもないし、気持ちがフラットでいることができるのです。
新しい友人関係なら話題を振ってくれる人や聞き役の人、面白い人やリーダーシップを取っている人など仕事ではない「素のその人」を観察し、そこに無理のない役柄を徐々に作っていくと楽に付き合っていけるのだと思います。そこから徐々に本当の自分をさらけ出しても大丈夫なのを確認しながら信頼関係を作っていけば人間関係もゆっくりですが、スムーズにいくのだと思います。

私自身初対面の時は自分の口調も体調も調子が良くて社交的だったけれど、2回目に会うときはどのテンションで関わっていったらいいのだろう?と20代の時は思うことがありましたが、この10年はそういったことで悩むことが無くなりました。

 

とても大切なのは置かれている状況や状態を俯瞰で見ること、そして役柄を演じる事でいつも平静で冷静な判断が出来るようにすることなのだと思っています。とても面倒ですが、人間関係という関係は面倒なもので、とても面白いものだと思っています。

 

私自身、イラストレーターのお仕事の時は「急ぎの依頼もクライアントが満足して頂けるようなイラストを描き、値段の値上げ交渉は一切しない」という役で動いているので、どの出版社の担当編集者さんとも一定の気持ちで仕事に取りかかることが出来ます。

カフェの店長の時は「焦らず騒がず笑顔を絶やさずスタッフの見本になる」という役で動いているのでどんなに焦る状況でも自分が演じている「店長」という役柄を仕事の間はしっかり演じるように心がけています。

人に対して演じるというのは聞こえが悪いように思いますが、自分の事は自分でフィルターを作り余力を残すのが日々平静でいられるコツなんだと思っています。そしてその余力は悩んでいる同僚や部下の話を聞いたり、次の仕事への準備が出来る事に繋がるのでトータルで見ると自分自身もとても日々が楽になるのだと思っています。

疲れませんか?と思われがちですが、角度を意識し演じるというのはオンオフのスイッチだと考えれば楽に過ごす方法の一つだと思います。

あなたはあなたのままでいいのですが、少しだけ俯瞰を意識することが自分にも良い影響が帰ってくると、嬉しいですよね!

 

そしてその余力で色んな人の話を聞くことが多くなったのですが、相手の心のドアを開くのにはちょっとしたコツがありました。それはまた、次回に。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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