がんばろうと思える、邦画5選

岩上 喜実

頑張るという言葉が今はあまり使ってはいけない言葉のようになっていますが、頑張ろうと素直に思える気持ちってとても大切で大きなものだと思っています。どんなに嫌なことや哀しいことがあっても、よし、頑張ろうと思えたらそれだけで新しい一歩が踏み出せる気がします。頑張るというのは古くさくもプレッシャーを与える言葉でもなく、笑顔になる始めの気持ちだとすればきっと、もっと頑張ることがワクワクして楽しいものになるのだと思います。

今回はそんなワクワクする気分をいつも思い出させてくれる、頑張ろうと思える邦画5選です。

百円の恋」(2014)主演:安藤サクラ

私の中のナンバーワン映画にもエントリーしているこの作品ですが、まず安藤サクラさん以外のキャスティングは考えられない程の圧倒的な演技で、何も期待せず観ていると衝撃的に面白かったです。まず、最初の頃の主人公の体型や表情と最後の体型と表情は全く別の人物で、何かに命をかける程の一生懸命さを持って取り組むとこんなに人って変われるものなんだと思える作品でした。人の泥臭い所と、やりたい事が決まったときの目の輝きが素晴らしく、頑張るってめちゃくちゃ格好いい、と素直に思えるはずです。

「フラガール」(2006)主演:松雪泰子、蒼井優

昭和40年代、炭鉱町に誕生したハワイアンセンターにまつわる実話を基にフラダンスショーを成功させるために奮闘する人々の姿を描いた作品です。全体的に土っぽい様な埃を感じる画面が続く中での女性達の笑顔や、最後のハワイアン衣装が眩しくて「花とアリス」の最後のダンスもそうでしたが、蒼井優さんのダンスはぐっと人を惹きつけて離さないところがありショーの中のソロの踊りには泣いてしまうほど魅惑的で健康的で、そして美しいのです。松雪泰子さんの美しさは勿論、出ている人全てが手探りで奮闘しているのは一見ばからしいような事でも、自分と仲間達を信じやりたい事に向かっていく姿は誰がどう見ても輝いているのだと思います。

「魔女の宅急便」(2014)主演:小芝風花

私が画の仕事をしようと決めたジブリアニメの同作ファンが多すぎて実写版はいまいち評価が少なかった作品ですが、全く別物として観てもらえると何て可愛らしくキキがとってもいじらしい、なんて素敵な映画だろうと思います。

一人で頑張るぞ!と思っていても一人で出来る事なんて容量がある程度決められているものなので限界が見えることも多いのですが、自分を助けてくれる人がいる事を知り、優しさに感謝し、それに対しまた頑張る。それが何て勇気をもらえる事なのか、笑顔で未来を切り開く素晴らしさを改めて知った1本でした。人は、人と生きていること、それが頑張る明日に繋がるものなんですよね。あとはファッションやインテリアが全て女子なら震えるほど可愛いので、それを観るだけでも価値のある映画なんですよ。

「阪急電車 片道15分の奇跡」主演:中谷美紀、戸田恵梨香

始点から終点まで片道15分の阪急今津線の電車内を舞台にした群像ドラマなので、ただのホッコリ系かなと見始めたのですが観た後爽やかな幸福感が体中に広がり、人にもっと優しくできる人になりたいと思わせてくれます。エピソードの割り振りも丁度良く、負担なくスッと観ることができ明日からも頑張ろう、と素直に思えます。

私は個人的に学生時代、阪急電車に乗って通学していたのであの電車の色や社内の温かい色使いなど思い出させてくれ、ノスタルジックな気分になるのもとても楽しいです。

「下妻物語」(2004)主演:土屋アンナ、深田恭子

例えば学生の頃からやりたい事が決まっている事って何も夢がない人にとったらとてつもなく輝いて見え、眩しすぎて自分が色褪せているように思えてしまうのです。この作品はロリータファッションに身を包み田舎で暮らすには浮いてしまう存在の女の子と、ザ・田舎のヤンキーの女の子とのカテゴリーを超えた友情物語ですが、その上で重要なのはやりたい夢がある子は周りに妬まれていても好きな事を突き詰められる本当の強さを持っている事。頑張る事って素晴らしいことなんですが、見方によっては同世代には残酷な一面もあり、何かをやり遂げるには覚悟がいるという事、そして覚悟を決めた女の子はとてつもなく輝いているという事だと思わされた映画でした。そして何より甘い深田恭子さんのロリータファッションも、かすれ声で女総長に憧れる可愛いヤンキーの土屋アンナさんも、かなり魅力的なキャラクターでジェットコースターのような物語はぜひ観て欲しい1本です。

新年がスタートし、何かに頑張ってみようかなと思っておられる方がいましたら是非観て欲しい映画ばかりです。頑張ると口に出して言うのが憚れやすい今の時代ですが、頑張ることが楽しい事を私は知っているので、身体に無理のない程度に頑張りたいなと思っています。

では、また次の日曜日に!

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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