丁寧に暮らしたくなる、邦画5選
日々を時間に追われて過ごしていると、普段焦らないところで焦ってしまってイライラしたり、怒りたくないのに怒ったりしてしまい後で落ち込んでしまうことがあります。その時はどんなに時間がなくても一杯のお茶をゆっくり頂き、その間はスマホや手帳は見ずに外の景色を観るようにして過ごすと自分の中の時計の針がゆっくりと正常に、普段通りの自分に戻ることがあり、それは私の中での特別な〝丁寧な時間〟でとても貴重な時間で誰にも邪魔されたくない時間なのです。
よく雑誌やネットの特集での〝丁寧な暮らし〟は全日常を注いでいるので少し面倒な印象になりますが、10分だけでも自分の中の丁寧な時間があれば気持ちが豊かになるのだと思います。1日はどんなに科学が発達しようがお金持ちになろうが24時間という決まりがあるので、その中で自分だけの時間を大切にしたいな、と思えた丁寧に暮らしたくなる邦画5選です。
「しあわせのパン」(2012)主演:原田知世、大泉洋
東京から自然囲まれる北海道に引っ越し、夫婦で開いたパンカフェに訪れる何かしら事情を抱えたお客さまが帰る時には少し心が軽くなっている、というストーリーでいかにも平和で丁寧な暮らし…という内容ではなく、夫婦それぞれも東京で色々あって心を閉じてしまった奥様がゆっくりと心の扉を開けてくれるのを急かさず包み込むように待っていてくれる、そんな旦那様の愛情が丁寧に日々を紡いでいるのが印象的な映画なのです。
好きな場所で、好きな人と好きなことをする。中々それが出来ない現代にとって、まるで絵本をみているようなお伽話のような設定ですが、もしかしたら本当にこんなカフェがあるのかもと思える優しい空気に包まれ憧れに満ちている映画です。そして歳をいくら重ねてもいつも美しい原田知世さんがコーヒーを淹れたり、スープを作ったり、洗濯をしたり、野菜を洗ったり。それだけで幸せな気分になる映画です。
「舟を編む」(2013)主演:松田龍平、宮崎あおい
辞書を作るというただそれだけのストーリーで、主人公の〝まじめくん〟は住んでいる部屋の大家さん以外の人には壁を作り関わろうとはしませんが、辞書を作るという地味だけれど間違ってはならないという仕事に関わり、元から好きだった言語をとても大切にし20数万語の言葉の海の中で一つ一つの言葉に愛情を持って要約していきます。そしてその仕事を通して信頼できる上司や、恋する人に出会い、大切な言語は使うことでもっと輝きを放ち意味があるという事に気付きます。
10年以上かけてひとつの仕事を丁寧に取り組むその姿は、言い訳や妥協はなく、仕事に愛情を持って過ごしている男性はなんて素晴らしいのだろう、と思える素敵な作品です。
何より奥さんとなる人との出会いや不器用な告白など、全部が欲しいと思う人が多いこの世の中で欲張らず本当に好きで欲しい物だけ頑張って手に入れるというのは、もしかしたらとても格好いい事なんだと思いました。地味な内容ですが、観て良かったと思える気持ちの良い映画です。
「かもめ食堂」(2006)主演:小林聡美、もたいまさこ、片桐はいり 原作:群ようこ
〝丁寧に暮らす〟というフレーズと、それまでになかった〝北欧〟いうジャンルを作った未だに人気の映画ですが何度観ても飽きない独特の空気感が癖になり、日本ではなくフィンランドの首都ヘルシンキを舞台にノンビリ、そしてゆったり、気持ちたおやかに丁度良い距離感で現地の人との交流を重ねながら経営する食堂にお客様が徐々に増えていく様子が、肩に力が入っておらず(入っているように見せていないのなら、経営する人としてもの凄いことです)、とても居心地の良い作品です。中でも網で焼く焼き鮭や、大きめのおにぎり、サクサクと切るトンカツ、淡々と作るその様子が良い意味で日本的で、丁寧にひとつひとつ、一歩ずつ進むことのシンプルさと真の力強さが心地よく胸に染みこんでいきます。
「西の魔女が死んだ」(2008)原作:梨木香歩
登校拒否になった女の子と大好きなおばあちゃんとの田舎の夏の暮らしを描いた少しファンタジー要素のある作品です。今は大人も子どもも関係なく様々な形での人間関係に疲れている人が多く、人は壊れるまでその場にいる必要はなく、もし可能なら少しその場を逃げて自然と共に暮らすのは不謹慎ながら素敵だなと思ってしまいました。
映画の中のおばあちゃんは思春期の揺らぎを優しく包み魔法のように世界は広いものだと伝えてくれます。亡くなったおじいちゃんが残した野いちご畑から摘んだ野いちごでジャムを作ったり、夜は植物の絵を描いたり縫い物をしたり、心地よい距離感で女の子は少しずつ笑顔が増えてきます。そんな中、おばあちゃんからおばあちゃんの祖母は不思議な力を持っていた魔女だったという話が出て「魔女にとって一番大切なのは意志の力と自分で決める力、そして自分で決めた事をやり遂げる力」という事を孫に伝えます。それは難しい事ではなく、自分で決めた1日のスケジュールをきちんとこなして過ごす、ただそれだけのことを丁寧に行う。それだけで気持ちは豊かになり明日の日差しが浴びたいと思うようになる、そういった明日が少しだけ明るくなる映画です。
「食堂かたつむり」(2010)主演:柴咲コウ 原作:小川糸
極度の悲しみと突然のショックな出来事で声が出なくなり、生きていくために帰りたくなかった実家の物置を利用し得意だった料理で小さな食堂を開くストーリーです。その小さな食堂は1日1組限定で決まったメニューはなく、事前のやりとりでイメージを膨らませ、その人のためだけに愛情を込めて料理をするのです。終盤では仲の悪かった母親の余命が分かり、その限りある命の中で食材の生と死を感じながら主人公の心の限りの料理を作ります。
大切な人の為に喜びそうな料理を前日から仕込んだり、自分のために明日からも頑張れる料理を作ったりと料理という家事の一つになりがちな項目を、じっくり丁寧に心を込めることで胃の中だけでなく心は満たされ笑顔で動きだそうという活力になるというのが分かる映画です。画面の中もまるで絵本をめくっているようなカラフルで摩訶不思議な気持ちになるので、良かったら暗い気持ちの時に観ると、まるで日曜日の天気の良い朝を迎えたような気持ちになるので良かったら観てみて下さいね。
着ている服を全てオーガニックにしたり、食べるものを無添加にしたりという事が丁寧な暮らしというわけではなく、全てを欲しがらず、自分の大切なものを大切にしながら暮らすことが今の時代の豊かな丁寧な暮らしだと思います。
少し身体や心が疲れてくるこの時期、皆さんが何かゆっくりした丁寧な時間を皆さんが過ごされますように、と思っています。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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