お店の対価はお客様の心の中にある

岩上 喜実

カフェを始めると決めた頃から、飲食店未経験だった私は様々な土地のカフェや飲食店に足を運びメニューからインテリア、制服にスタッフの規定基準を見るようになり自分の好みの確定だけでは無く、来て頂きたいお客様像に合うお店にしたいと考えを固めていました。それに加えての現実的なメニュー構成と、インテリアのお金の問題を照らし合わせてスタートさせました。
まずはメニュー構成ですが、ランチとディナーの考え方の違いに悩みました。当たり前のことですが、始めてみるとランチとディナーの来られるお客様層が全く違うのです。
オープン当初ランチタイムは20代後半〜50代前半、男女比率は1:9、お仕事の昼休憩中風の方、お友達と楽しみながらの方、一人でフラリとの方、と大体3パターンが主なお客様層でした。そしてそのランチを気に入って下さってディナーにも繋がるのが、お仕事の昼休憩中風の方が多かったのです。そしてその方がオーダーする物の大半がパスタでもハンバーグでもなく、お米が主体の『日替わり定食』なのです。その方向が分かれば、この日替わり定食のメインをお肉にし、ソースを毎日替え、特別では無いけど迷ったらこれを頼めばいいというメニューというのをコンスタントに来て下さるお客様にインプットしたかったのです。

そしてお仕事帰りや休日夜に来て下さった際に、その日替わり定食が少しランクアップした『お昼では出来ないゆっくりとした時間と食事』が出来る場所としてメニューを考えていきました。ランチを入り口にディナーに誘い込む、飲食店の基本を体現しランチとディナーのそれぞれの必要な要素が分かってきたような気がしたのです。

ランチはスピーディーでありながら、このお店の顔と言われるようなものを。ディナーはランチにプラス感動さ、便利さ、親しみやすさが加わらなければいけないということ。合間のカフェタイムはここにしかないスイーツを作ること。万人には受けなくても、ここにしかないものをインプットしてもらうこと。


そして今現在はランチタイムには10代後半〜60代後半、男女比率3:7になり名物ランチのローストビーフ丼、ストウブ鍋のビーフシチューやハンバーグは毎日売り切れ、そんなお肉もりもりランチとは対局な野菜サラダランチ、お子様も楽しめるお子様プレートも人気になりました。カフェはスイーツ目当ての方が8割、ドリンクのみの2割、ディナーは友人連れ、男女、そして家族の割合が1割から3割に。家族連れが増えたのは、ランチに来られたお母さんや会社の会で使われたお父さんがご家族を連れて来られる事が多くなりました。その場合に「とても嬉しいです、また是非お待ちしておりますね。」の一言を伝えるのも、とても大切な事です。


女性オーナーというものは知っている限りの人を見ると、かなり貪欲で欲張りです。私も仕事に限っては強欲で白黒はっきり付けるタイプなので同業の男性オーナーからは鬱陶しくて嫌われてしまいます。ですが来て下さるお客様を目と肌で感じ、このお店はこうでないと、というカチカチのプライドはあっさり捨てお客様の喜ぶ顔とお店の収益とを同時に得たいという強欲さは自分でも気に入っています。このお店はこうでないと、はお客様の心の中だけでいいような気がします。

 

飲食店ですからもちろん食事が美味しいのは当たり前と思ってはいますが、周りに沢山の美味しい飲食店が多いので『特別ではなくいつもそこにある』というポジションを狙っています。

女性オーナーはものすごく現実的で、冷酷です。男性オーナーの方が優しく器が大きくポリシーを貫く方が多いです。その女性ならではの現実的な目線で経営するからこその気付きも多いと思います。ご高齢の方も、学生さんも、色んな世代性別の方にも足を運びやすい『オシャレすぎず』、でも『写真に撮りたくなる』、そして『居心地が良い』カフェになったらいいなと思っています。

今まで色々と飲食店について自分の目線で書いてきましたが、長く続けている魅力的なお店が周りに多く、とても羨ましく尊敬しています。その中で醜く戦ってきた私ですが、いつか自分でお店を開店したい方や今現在悩んでいる方が少しでも不安が無くなるように読んで貰えたらと思って、失敗例や想いをさらけ出してこのブログを書いてきました。

少しでも不安が軽くなって貰えていたら、とても嬉しいです。そして挑戦する楽しさは必ずあると思っています。

 

飲食店編は次回最終回です。

それではまた、次回に。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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