この本は、私の心の絆創膏

岩上 喜実

何も事件なんかない毎日なのに、健康なのに、夕日がきれいなのに、ふと言いしれぬ不安だったり、人に言うまでもない小さな不満が溜まってしまう事ってありませんか?普段人に愚痴を言わなかったり真面目に過ごしている人ほど、常に目に見えない何かに押しつぶされる直前なのかもしれません。
そんな20代後半〜30代の女性の人には言えないモヤモヤモヤモヤ〜をイラストとエッセイで読みやすく、私の心の傷口に丁度良い絆創膏のような存在の『益田ミリ』という作家さん。

出会ったのは当時書店でサブカルチャーを担当していた2006年、幻冬舎から発売された「すーちゃん」という4コマで綴るイラストエッセイでした。どこの棚がいいかな?と読み始めたら今までにない味わいのイラスト、少ない言葉なのに、じゅんじゅんと心に沈み込んでいきました。

ページをめくる度「この本は、すごく売れるかもしれない」と上司に相談無くその場で追加発注をしたのを覚えています。派手さは全くないのに、手に入れたくなる内容。今までになかった心の奥で渦巻いていた小さな不満の数々。それをこんなにサラリと気持ちよく描けるなんて…とかなり影響を受けました。

その後次々発売される本は中身を見ずに即購入し、帰るまで待ちきれず車の中で読んでいました。こんな本は小学生の頃の少女漫画雑誌以来でした。

「すーちゃん」シリーズはどれもタイトルが良く「結婚しなくていいですか。」「どうしても嫌いな人」「すーちゃんの恋」全て同世代の女性が中々言えない言葉だらけです。

他にも川柳やエッセイなど、文章も私を引きつける理由の一つでした。

だらだらと長い文章ではなく一行でしっかり染み込む言葉が私の心にずっと居てくれる、そんな言葉を使う作家さんです。イラストもシンプルで癖がないのに、無表情な様でいて少しの違いで全然違う、とても魅了的なイラストです。

益田ミリさんのおすすめは本当に全て、と言いたい位ですが初めての方には

「すーちゃん」「週末、森で」「ふつうな私のゆるゆる作家生活」「わたし恋をしている」がとても読みやすいと思います。どれも当てつけがましくなく、前から一緒にいる友人の様な姉妹の様な不思議な本です。

小説は確かに面白いですし、絵がない分自分でキャストを決めることが出来、想像力や妄想力がとても強くなります。だからといってイラストがあるから軽くなるわけではなく、その文章にあったイラストを描くからこそより読者の心にとまる本になるかが大切だと思います。そんなイラストレーターとして基本の考えを思い出させてくれたのも、益田ミリさんの本でした。

文章を端的に、無駄を省き分かりやすくしたい、という方にもおすすめです。

映画「めがね」「かもめ食堂」ドラマ「すいか」が好きな方にはきっと好きになってもらえると思います。そしてこの作家さんの本を読んでいるときに飲みたいのはポットにいれたほうじ茶です。お供はハッピーターンやチップスターなどしょっぱい物が気分です。是非、お試し下さいね。

 

「すーちゃん」幻冬舎文庫 ‪9784344413481‬

「週末、森で」幻冬舎文庫 ‪9784344418516‬

「ふつうな私のゆるゆる作家生活」文春文庫 ‪9784167900786‬

「わたし恋をしている」角川文庫 ‪9784041010754‬

 

そして、この謎の番号。

これは本には必ず付いているISBN(アイエスビーエヌ)コードといって、このコードが分かれば書店員さんが検索する時にとてもとても便利なコードなんです。最近の検索機にも付いていますので気になる本が出来た場合タイトルと一緒にメモしておくのが私の癖なのです。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
Non café
鳥取県米子市米原6丁目1-14
0859-21-8700
Facebook:https://www.facebook.com/Noncafe/?fref=ts
イラストと教室問い合わせ:nonillustration@gmail.com