自分だけの永遠に愛せる雑貨⑧靴

岩上 喜実

1日のコーディネートを決めるとき、皆さんは何を主役にすることが多いですか?

新しいストライプのシャツワンピース、お気に入りのオールレザーのバッグ、プレゼントで頂いた帽子…など他人には分からないかもしれないけれど秘かにその日1日が特別な日になるような、そんなアイテムを身に付けていると自然と笑顔になってしまいますよね。ふと考えると私の場合は靴が多い気がします。
元々足のサイズが少し標準よりも大きいことも有り、お洒落をしたくなる歳の頃から靴選びは悩みのタネでもあったのです。

持ち歩く荷物が大きかったり重かったりするので、疲れそうなヒールは避けていたし、壁に絵を描く仕事も受けていたので絵の具やペンキがついてしまうかもしれない。かといって野暮ったい雰囲気にはしたくないし、急にご飯に誘われてどのお店に入っても相手の方が恥ずかしくならないような、そんな靴を探していました。

 

その時出会った『レペットのジャズシューズZIZI』は私のワガママを全てクリアしており、マニッシュでスッキリとした印象のこのシューズばかりを履いていました。

ふわっとしたスカートにも、ストンとした太めのパンツにも、デニムにも合うこのシューズはパリの伝統あるrepetto(レペット)というシューズやレザーグッズのブランドです。レペットはバレエダンサーが街で履いているような可愛らしいフォルムの靴が多い中、このジャズシューズZIZIは70年代作詞作曲家でもあり、映画監督でもあり歌手俳優でもあるセルジュ・ゲンズブールが愛用しており女性も男性も履けるというのが、甘い服装が苦手な私にしっくりきたのだと思います。

10年以上履いていますが、とても軽いので旅行先にも持参したり、流行の無いデザインなので毎年違和感なく履けるのがとても嬉しいです。最初は白を購入し、秋冬にも履けるよう黒も購入したほどなのです。

きっと40代、50代になっても履き続けていくのだと思います。

 

そしてもう一つ大切に履いている靴アメリカ生まれの『ダンスコ』です。

ぽっくりとした先端に和んでしまうので、一見ナチュラルな服装にしか合わないのかなと思いましたが一度履いてコーディネートしてみると、どのスタイルでも相性良くまとまる器の大きさと、歩くことが苦にならない履き心地の良さにとても驚いたのを覚えています。最初の1足はずっとお付き合いのあるセレクトショップのオーナーさんに戴き、とても素敵なご夫婦からの贈り物なので只者ではない靴だと思っていましたが、まさかこんなにも魅力溢れる靴だとは、と未だに履く度に驚いてしまいます。

雑貨屋に勤めていた頃は展示会などで出張が多く、その度にこのダンスコに助けられ、そして旅をいつも楽しいものにしてくれたのです。

靴とは健康を左右する物でもありモチベーションを高めてくれる物なんだと、この靴から教わったような気がします。

 

ダンスコと同じく長年愛用しているのは、こちらもアメリカから生まれた『オーロラシューズ』です。工房でお爺さんが履いているような無骨で素朴な印象のこの靴は、最初はとても革が固く、少しだけ履くのがきつめに感じますが、気がつけば革は柔らかくなり自分の足にぴったりと沿って苦痛だった一瞬の事を忘れてしまうのです。

こちらは上の2足より素朴な印象になるので、きちんとした服装には少しバランスが悪くなりますがリラックスしたい日の服装にとても合うのです。仕事が立て込んだ日々が続いた後の休日に履いて散歩に行くと「おつかれさま」とオフの私を包んでくれる、そんな靴なのです。

 

前回の器と同じで、靴を見るとその人が分かるようなそんな気がしてきます。その人が今日という日をどう過ごしたいのか覗き見できるようで、とても面白い服飾雑貨だなと思います。

 

では、また日曜日に。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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