①羨ましい恥ずかしい羨ましい

岩上 喜実

私はもうすぐ40歳になります。

それは何か特別なことなのかまだ分かりませんが、何故か29歳から30歳になる時より色んなこれからのことを想像してワクワクしています。きっと周りに楽しく過ごしている年上の女性が多くその人にしか出来ない仕事を楽しそうに頑張っていたり、自分の家族を一生懸命守っていたり、魅力的な女性ばかりを見たり会話をしているからだと気付きました。

そんな時、私がこのまま歳を重ねて40代、50代、60代と階段をゆっくりと上がっていく姿を年下の女性が「歳を重ねていくのって楽しそうだな」と感じてもらえるような生き方をしたいなと思っています。

そう考えていると、女性の20代、30代は楽しい事と同じくらいの辛い事や面倒くさい事が多く、それらをどう感じて受け止めたり回避できたかを自分自身でも忘れないようまとめておこうと思ったのです。

ものすごく当たり前の事ですが一年ごとにまんべんなく年を重ね一歳ごとに年齢は増えていき10代、20代、30代を進みもうすぐ40代の入り口に立った今学校生活や友人関係が全てだった10代、社会に入り異性との関係や自分の身なりを意識する20代と流れ、より複雑になった部分とシンプルになった部分が明らかになり一歩ずつ進んだ30代を振り返ると、何て女性はただ生きていくだけでこんなに大変で面白いのだろうと思ったのです。

10代では周りの目を気にしすぎて自分という個性を出しにくく、むしろ出さないほうが自分を守るセーフティーゾーンを鉄壁にする最大の武器になるのですが、そのままの流れで20代30代に向かってしまうと流れのままに流されていたので自分の考えを言葉にし、思っている事を実現しづらい環境を自らが作ってしまうのです。学生生活を終え社会に入った時の自分の魅せ方をどう作っていくか、まさにセルフプロデュース力が仕事ではなく私生活で試され、その方向次第で20代30代は作られていくような気ながします。

自分のしたい仕事を追求していくためには、妥協や犠牲にしなければならないこともあります。それは20代での出産や育児、結婚かもしれませんし、友人達との遊ぶ時間や若い内だからこそ行ける旅行の時間かもしれませんし、一人旅や読書、映画などの一人の時間かもしれません。そのどれも後回しにして打ち込んだ仕事は自分の確かな価値になりますが、ふと振り返ったとき何だかどこか空しく、周りの女性の生き方が気になってしまうものです。その生き方は私が20代の時の過ごし方ですがやりたかった仕事に一区切りがついた時、学生時代の友人達の子どもは小学生に上がっていて母としても女性としてもすごく輝いて見え口には出せませんでしたが羨ましくて羨ましくてしょうがありませんでした。

その他にも恋愛を全力で楽しんでいる友人や全国各地好きな所に旅行している友人を心の底から羨ましく、私は一日中仕事ばかりして今の自分は輝いているのか、それとも世間から置いてけぼりになったみすぼらしい女性になっているのかが分からなくてその時期は自分の姿を鏡で見るのが恐ろしいほどで『羨ましい』、そう思う事が『恥ずかしい』。自分が物理的に出来ない事を成し遂げている同世代の女性を目にするのが嫌で何とも言えない気持ち悪い感情に押しつぶされるようでした。

ですがその『羨ましい』という感情が『恥ずかしい』という感情にイコールすることは次第に無くなっていき、30代も中盤になってくると「羨ましい、さてわたしも頑張ってみるか」という清々しい感情に変わっていくことが自分の中で嬉しい出来事だったのです。

誰でも自分と同世代の人が、自分に出来ない事を始めていたり成し遂げていたりすると大なり小なり『羨ましい』という感情になるのはしょうがないことだと思います。ですがそれを羨み、相手を蔑んだりするのは何も前に進んでいないという事に気付くことが出来れば、『羨ましい』感情を上手く自分の中でコントロール出来るようになる近道になるのだと思います。

起業したかったのに、あの人が始めてしまって羨ましい。

子どもが欲しいのに中々出来ない、すぐに出来る人が羨ましい。

40歳近いのに20代に見えるほどあの人は綺麗で羨ましい。

起業したかったら調べたりセミナーに行き自分のしたいことを固めて始めれば周りの事なんて気にする暇なんて無いはずですし、夫婦の関係は100組いれば100通りの関係がありすぐに妊娠しようが中々出来なかろうが他の人には分からない見えにくい問題がどちらにもあるはずですし、同世代でも並外れて綺麗な人は本当に努力や生活スタイルの工夫をしているのだと思いますし、それは他の人が分からなくて当然という事を頭に入れていれば『羨ましい』が自分にとって『恥ずかしい』ということは少なくなってくるのだと思っています。

20代はどんどん恥ずかしいことを経験してしまって30代はその経験を自分の魅力のひとつに出来るチャンスが『羨ましい』に込められていると思えば、人を羨むことは決して悪いことではないと思えたら、きっと色々なことが少しだけ楽しくなってくるような気がします。

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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