後腐れのない邦画、3選

岩上 喜実

このブログで以前映画の紹介をした時、私個人の独りよがりな映画のセレクトと紹介だったのにも関わらず読んで頂ける人が多く有り難い事にお仕事も頂けるようになりました。趣味としてあの後もずっと邦画は観続けていて、何故か日常の一部になっているような気がしてなりませんが、すぐに忘れてしまいそうなのでその中で近年観た作品で気になった作品を12回に分けてご紹介したいと思いますので、何か邦画観たいけど何観ようかなー、という温かい目で読んで頂けたら嬉しいです。

私も歳を重ねたみたいで、以前好きだったオチがないような日常を切り取っただけのような淡々とした映画より、オチが分かりやすくなっているような後腐れの無いような作品をよく選ぶようになり、何かが始まって、何かが起こって、何かが終わって、ハイ終了!というのが本当に気持ち良くなってきたのです。その中でキャスティングがピッタリだったり、何故か最後まで観たくなる映画は、娯楽として本当に気持ちが良い位置に居るような気がします。

 

「今夜、ロマンス劇場で」(2018)主演:綾瀬はるか 坂口健太郎

何かの予告で観た時はよくある時空もののラブストーリーかなと思って気楽な気持ちで観ていましたが、昭和のスターが今のように近いものではなく雲の上のような存在だった頃の映画そのものの存在がファンタジーであった時代に、輝くような「ローマの休日」を思わせる和製オードリー・ヘップバーンそのままの綾瀬はるかさんと「ニューシネマパラダイス」を思わせる坂口健太郎さんの風貌も中々面白い…というだけの映画かと途中までは思っていました。

ですが観続けていくうちに、そのありきたりな内容の中に嫌な思いをする事がひとつもないことに気がつきました。普段映画を観ていると必ず悪者が出たりするもので、少なからず観ている私にも嫌な思いをする事が多いのですが、この映画は一つもないのです。終わり方はこれ以上はない気持ちの良い終わり方でしたし、何より北村一輝さんのキャラクターがキュートすぎて、つい流し観のつもりがきちんと真正面で観てしまう作品でした。ファンタジーってこういう映画なんだと思える可愛らしい映画でした。

 

「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(2018)主演:篠原涼子 広瀬すず

予告が出た段階でまずルーズソックスとアムラー世代だった私は懐かしさで、恋物語にはもうキュンとしなくなったのに黒く焼け髪を明るくしスカートは短く大きめのカーディガンを被り足元はがっちりルーズソックスの女子高生がポケベルを鳴らしTRFで踊り午後の紅茶を飲みながら笑い合っているのを見て胸がきゅーん!と高鳴っていました。映画「モテキ」の監督らしく急にパッとステージのように踊ったり主人公の心情でパッと画面が輝いたりするので余計に懐かしさで、あの頃の気持ちを思い出したようになりました。

女子高生が世界を動かしていたと言われていたあの頃の格好よく無敵だった友人が40歳を超えて久しぶりに会うとガンで余命幾ばくも無い状態だった場合、私も主人公と同じように何とかしたいと思うのだと思います。

色物かと思って懐かしいだけで気軽に観始めましたが、分かりやすいストーリーに懐かしさも相まってどんどん吸い込まれていき、自分の高校生時代に何でもないことで大笑いしていたあの頃の友達は何となく特別で、普段は忘れていますが今でも宝物だと思って居ることを掘り起こしてくれました。ストーリーに出てくる、タイムカプセルのような未来の自分へのメッセージは、その世代にとってもう夢を追うには少し遅いし諦めてしまった想いや妥協してきた負い目が涙となって流れていくような気持ちになりました。今が不幸せな訳では無いのに、何か大切な物を忘れてしまったような感覚があります。でも、それが分かり合えるあの時の友人がいてくれるからこそ今現在の立ち位置が出来たのだと思えます。

そして何より小池栄子さんの出ている映画はやっぱり面白い、とも思える映画でした。

 

「ミックス。」(2017)主演:新垣結衣 瑛太

男に振られたばかりの過去に卓球で名をはせた女と、ボクシングから離れた男が出会い導かれたように卓球でペアを組み問題だらけのチームメイトと共に卓球の面白さにハマっていくというストーリーで、もしかしたら飽きてしまうかな…という内容でしたがスピード感ある進み方と出ている人達の曲者具合の使い方と、観た人はみんな思っていると思いますが蒼井優さんの中国人役の可愛らしさと、選手の得意技などのテロップの使い方など観る側が飽きないように作られた映画で要所要所で色んな俳優・女優が出ているのもエンターテイメント性が高い映画でした。〝卓球〟という一見すると地味で映画になるか分からないような題材を、色々な人生と絡めて観る人をドキドキさせるスポーツに変えてくれたこの映画は、劇場ではそんなにヒットはしなかったようですが家族みんなで力を入れず楽しめる作品だと思っています。

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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