私の中の、ずっと当たり前で特別な漫画
小学生の頃から漫画が好きで家には漫画棚がある程、三姉妹で漫画ばかり読んでいました。少女漫画から、近所の男の子が読んでいたコロコロコミックやジャンプの連載、父の読んでいた三国志やちょっと大人の内容のものまで、漢字は漫画で覚えました、と言える程読み込んでいました。今でも三姉妹集まると「今、何読んでる?」と聞いてしまいますし、書店の漫画ブースに行くのは宝探しの気分になります。漫画は私の中で最も簡単に小旅行に行く事が出来るチケットだったりします。
大好きな漫画は沢山ありますし、好きな作家さんも沢山いますが、作品によってこれはちょっと好みじゃなかった…という事もあります。自分自身の作品でも、今まで描いた本の中にはターゲット層が違って、以前好きだと言って下さった方が「今回のはイマイチだった」と感想を下さることもあります。ですがその方にはイマイチでも「今回のが一番好きでした!」と言って下さる方もいて、常に一貫性を持って作品を作り続けるのはとても、とても難しい事なんだなと感じています。
今回ご紹介する作家さんは、小学生時代の友人からもその漫画家ずっと好きだよね、と言われる位読み込んでいる『谷川史子』さんです。
小学生の頃姉が買っていた「りぼん」で出会い、今までの少女漫画とは明らかに違うのが一目で分かりました。それまで読んでいたのは紙を埋め尽くす程の文字や、顔の半分まであるキラキラ光る眼の女の子の顔の主人公達、私とは明らかに別世界の物語と絵ばかりで、少し冷めた気持ちで読んでいた嫌な小学生でした。そこでいきなり現れた谷川さんの漫画は、余白も充分あり、顔立ちも他人とは思えないほど淡泊で派手さもなく、何より擬音の使い方がとても胸に染みたのを覚えています。雪の上を歩くさくさくという音、風が通り抜けるサァァという音、全てが実際に耳の中に聞こえてくるような漫画だったのです。
物語もあっさりしているように見えて、なぜだか何度も何度も読みたくなる、単館系の上質な邦画を観ているような気分になります。何故映画化にならないのか不思議な位で、私がもし映像監督なら映画化かショートドラマを作りたい程なのです。
男性でも読みやすく、最初の1冊なら「おひとり様物語」①〜⑥以下続刊がおすすめです。都会で一人暮らしをした経験のある方なら自分の事なの?という位、細かい描写が親近感で溢れています。女性はいつまでも『女の子』の部分が多く、いくら歳を重ねても友人関係で悩み、両親との関係で悩み、異性との関係も悩み、仕事で悩み、沢山沢山悩みがあり尽きることがないのです。
ですがその分、女性一人一人に色々なドラマが生まれ、何かしらのエンディングがあるのです。それが完璧なエンディングではなくても、日々は続いていく事が当たり前の事なんだなと感じるショートストーリー仕立ての漫画です。
短編集が多いのもこの作家さんの特徴かもしれません。あっという間に読める手軽さもありながら自分の本棚にずっと置いておきたくなる、そんな物語が多いのです。「P.S.アイラブユー」「ブルー・サムシング」「手紙」「くらしのいずみ」「積極—あいのうたー」「草の上 星の下」、少女漫画より少し大人になった女性という名の女の子が読むべき漫画だと思っています。
これらの作品達よりもっと前の作品もどれもいいのですが、今回はこの辺で。
谷川史子さんがお好きなら、勝田文さんもおすすめですので合わせて楽しんでみて下さいね。そして読みながらお供にしたいのは無味の炭酸水や三ツ矢サイダーとチップスター、爽やかで懐かしくて止まらない感じが谷川さんの作品に合うような気がして大好きなんです。
「おひとり様物語」講談社
①9784063376531②9784063376852③9784063377217④9784063377538⑤9784063377958⑥9784063378375
「P.S.アイラブユー」集英社 9784088655550
「ブルー・サムシング」集英社 9784088454269
「手紙」集英社 9784088568669
「くらしのいずみ」少年画報社 9784785929091
「積極—あいのうたー」集英社 9784088653686
「草の下 星の下」集英社 9784088654836
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
鳥取県米子市米原6丁目1-14
0859-21-87000859-21-8700
Facebook:https://www.facebook.com/Noncafe/?fref=ts
イラストと教室問い合わせ:nonillustration@gmail.com