諦める理由がなければ続ける

岩上 喜実

どういった形で書籍は出来ていくのか、イラストレーターなりたての頃は雲を掴むような話というか現実味が無く調べても大事なところが省かれていて始め方が全く分かりませんでした。初めての書籍の担当さんに一から教えて頂き、調べても分からないことを沢山質問しながらただひたすら描いていましたが自分の知らなかった自分に出会え、向き合う作業だなと感じたのを覚えています。
これから何かしら書籍を作ってみたいと思っている方に、ひとつのやり方として読んで頂けたらと思います。

まず担当者さんは出版社の利益を考えています。

担当した書籍を売りたい、沢山の方にこの作家さんを知って貰いたい、会社の利益にしたい。それに対応できる方を探していると話してくれた編集さんがいました。とても正直な意見だし、良い作家が居ても売り方によって全く売れず絶版になっていく書籍を書店員の時に何冊も見ていましたので、双方が納得し、かつしっかり利益がある本を作らなければと思いました。

それは本だけでは無く、どの仕事にも通じることだと思います。利益ばかりやどちらかの比重バランスが悪くなると続かないですよね。

担当さんとは沢山会話をします。

何をどう書いたら売れるのか、仕事以外の雑談やお酒を飲んでいるときにポロッとでた一言から本が生まれたこともありました。そしてそのテーマは3ヶ月〜半年後の世間に合っているのか、出しても売れるのかを予想分析しスケジュールを決めていきます。

テーマが決まれば、描く側は一番大変なネタを頭が捻れるまで絞り出し、ダメ出しされ、また描くという苦行のような期間に入ります。資料を探し、自分の頭の引き出しが壊れるほど底から出していくような感覚です。

内容が1冊分まとまれば編集さんの大変な『台割り』という目次からページ割りの作業が始まり、それに沿ってひたすらラフを描き、下書きをし、ペンを入れ、着色していきます。


作家と担当さんは本当の二人三脚だと感じました。私は何でも話が出来る担当さんにあの頃出会えて本当に幸運でしたが、描き続けキッカケを作った自分の事も褒めてあげたい気持ちです。今度は何を描こう、そういう気持ちになるように下ごしらえをしてくれる担当さんの事を心から尊敬しています。

いつか本を出したいなと思っている方がいたら、自分が何を売りにしているか、どこの出版社で出したいのか、どの世代に向けているのか、色んな事に目を向けてみるのもいいかもしれませんよね。

…そんな偉そうなことを言っている私ですが、この1年は描いてはボツの繰り返しです。ただただ褒めて貰いたくて絞り出していますが、もっと沢山頑張らなくてはと思っています。諦めない、ではなく私はイラストを諦める理由がないのだと最近は感じます。

さて、かたい話ばかりでしたので次回は息抜き。ゆるイラストの描き方を少しご紹介しますね。

 

 

岩上 喜実
イラストレーター、イラストエッセイスト
18歳から書籍挿絵、企業キャラクター、CMイラストを描く山陰在住イラストレーター兼イラストエッセイスト。挿絵書籍と自身が描くイラストエッセイを合わせて、文庫化と海外出版含めて2005年から現在で29冊刊行。
2011年から始めた「ゆるイラスト教室」と同年プロデュースと店長をしている「Non café(米子市)」とイラストレーターを毎日のほほんと楽しみながら奮闘しています。
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